法人が役員に支給する給与は、原則として定期同額給与でないと損金として計上をすることが出来ません。この給与とは金銭によるもののみならず、経済的利益を役員が享受することも含まれます。
経済的利益がどのようなものなのか把握をしていないと、意図せずとも定期同額給与の範囲を超える給与の支給を行ってしまい、給与を損金として計上をすることが出来なくなってしまう可能性があります。
今回はその経済的利益についてご紹介致します。
1.経済的利益とは
法人が役員に支給する給与には、金銭によるもののみならず、債務の免除による利益その他の経済的利益も含まれます。実質的にその役員に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものをいい、以下のようなものがあります。①資産を贈与した場合におけるその資産の時価
例えば法人の所有する社用車を無償で役員に贈与した場合、その社用車の時価が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
②資産を時価より低額で譲渡した場合における時価と譲渡価額との差額
上記①の例が無償で無い場合も、時価より低額で譲渡した場合には、その社用車の時価と役員が法人に支払った金額の差額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
③債権を放棄し又は免除した場合における債権の放棄額等
例えば法人から役員が借入を行っていた場合、役員からの借入金の返済を免除した場合には、その返済を免除した金額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
④無償又は低額で居住用土地又は家屋の提供をした場合における通常収受すべき賃貸料と実際に徴収した賃貸料の額との差額
例えば法人が社宅として役員に無償で住まいを提供した場合、その家賃相当額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
⑤無利息又は低率で金銭の貸付けをした場合における通常収受すべき利息と実際に徴収した利息との差額
例えば法人から役員が借入を行っており利息を支払っていない場合、その利息相当額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
⑥役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約の保険料の全部又は一部を負担した場合における保険料の負担額
例えば法人が役員を保険金受取人とする保険を契約し、その保険料の支払いを全額法人が行っていた場合、その保険料相当額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になります。
2.経済的利益の取り扱い
役員に対する給与の額とされる経済的な利益の額が毎月おおむね一定している場合には定期同額給与に該当し、損金に計上されますが、その他の場合には、経済的な利益に相当する金額は損金に計上されません。例えば法人が社宅として役員に無償で住まいを提供した場合、その家賃相当額が、役員が受け取った経済的利益に該当をする金額になりますが、この行為そのものが違法であり損金に計上をされないということではありません。
家賃相当額について定期同額給与として正しく届け出、会計処理を行っている場合は、損金として計上をすることが出来ます。
3.経済的利益と間違えやすいもの
法人から支給される全てのものが経済的利益に該当をするとは限りません。就業規則で定められている慶弔金、葬祭料、永続勤続者への記念品等の、全ての役員や従業員に一律に法人から支給されるものは、給与とされる経済的利益に該当をしません。法人の福利厚生費として会計処理が行われ、損金として計上をすることが出来ます。
4.まとめ
今回は経済的利益についてご紹介致しました。経済的利益は給与とみなされ、意図せずとも定期同額給与の範囲を超える給与の支給を行ってしまうことがありますので、注意が必要です。上記の内容にご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。