株式会社の決算の確定には株主総会での承認が必要です。しかし新型コロナウイルスの影響によって、人が集まるイベントの自粛が要請される中、株主総会も一堂に人が会するため、中止せざる得ない場合があります。
このように新型コロナウイルスの影響によって株主総会が開けない場合の法人税の申告期限はどのような取り扱いになるのでしょうか。
この記事の目次
1.株主総会の役割
株主総会とは株主を構成員とする、会社の基本的事項について意思決定を行う機関です。株主総会が行うべき意思決定のひとつに、事業年度毎の決算の承認があります。株主は出資金額に応じた株式を保有し、その株式の保有数によって議決権が定められています。事業年度毎に作成される決算書類は、この議決権の過半数の承認をもって、その株式会社の正式な決算の数値として決定がされます。
2.新型コロナウイルスによる株主総会への影響
これまでの株主総会は、株主が一堂に人が会し、意思決定を行う形式が主流でした。株主総会の終了後に株主に手土産を渡す会社や、懇親会を設ける会社もありましたが、一堂に会すことや飲食物の受け渡しに、新型コロナウイルスの感染が心配され、その形式が変わりつつあります。一堂に会さず、遠方の株主は移動による感染リスクを回避するために、オンラインで株主総会に参加することが出来る、感染防止のために株主総会に保健師が待機する、お土産や懇親会を中止する等の対応が、各株式会社で採用されるようになりました。
また定時株主総会の開催時期は定款に定められている場合、その時期に原則として開催されるべきものではありますが、新型コロナウイルスのような事由で開催不可能な状況になった際にまでその時期を厳守する必要はない、という法務省からの通達もあります。
3.株主総会が開けない場合の法人税の申告期限
法人税の計算は、株主総会で承認決定された決算の数値をもって算出することから、申告期限内に株主総会が開けず、決算の数値が定まらない場合は、法人税の納税、申告が出来なくなります。この株主総会が開けない事由が、新型コロナウイルスの影響によるものである場合、会社は法人税の申告期限の延長が認められています。
一方で消費税の計算については、承認決定された決算の数値をもって算出するものではないため、株主総会が開けないことによる申告期限の延長は認められていません。ただし、社員が出社することが不可能である等の通常の業務体制を維持することが難しい場合には、消費税においても期限の延長が認められる場合があります。
4.法人税の申告期限延長の方法
法人税の申告期限を延長するためには、申告期限の延長の特例の申請という手続きを行う必要があります。申告期限の延長の特例の申請とは、新型コロナウイルスの影響のみならず、やむを得ない事情等により申告期限を延長したい場合に行う手続きです。この申請を行うためには、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで又は連結事業年度終了の日の翌日から45日以内に、書類を税務署に提出を行う必要があります。必要な書類は申告期限の延長の特例の申請書、定款の写しです。
新型コロナウイルスの影響により株主総会が開けず、期限を延長することは認められるとされていますが、上記の手続きのみならず、その申請の審査のために税務署から問い合わせや、追加での書類の提出が求められることも考えられます。
5.まとめ
上記のように、新型コロナウイルスの影響によって株主総会が開けず決算の数字が確定しない場合、法人税の申告期限の延長が認められます。感染リスクがあるのにも関わらず、多くの人が集まることは、株主総会がクラスターになる危険があり、その会社の存続が危ぶまれることもあります。無理のない株主総会の日程の調整や、株主総会の形式の選択をすると良いでしょう。※参考:金融庁HP
「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査及び株主総会の対応について」
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。
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