新型コロナウイルスによるIT導入補助金!その会計処理とは?
税務・財務


新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、従来の対面型の接客や社屋に出勤する勤務形態等の様々な労働環境が見直され始め、無人接客やテレワーク等のIT技術による労働環境の導入が着目されています。
このようなIT技術による労働環境の導入の手助けとなるIT導入補助金と、その会計処理について今回はご紹介致します。

この記事の目次

1.IT導入補助金とは

中小企業、小規模事業者が自社の課題や目的に合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上の向上を援助するものです。

①対象補助者

各業種の下記の資本金、従業員のいずれかを下回る事業者です。

業種資本金常勤従業員
一般法人 製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業以外) 5,000万円 100人
ソフトウェア業、情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業(自動車、航空機用タイヤチューブ製造業、工業用ベルト製造業以外) 3億円 900人
その他の業種 3億円 300人
その他の法人 医療法人、社会福祉法人、学校法人 300人
商工会、商工会連合会、商工会議所 100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 主たる業種に記載の従業員規模
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 主たる業種に記載の従業員規模
一般、公益財団法人、一般、公益社団法人 主たる業種に記載の従業員規模
特定非営利活動法人 主たる業種に記載の従業員規模

②補助対象経費

補助対象となる経費はソフトウェア費、導入関連費等です。例として無人接客のためのロボット型接客ツールや、勤務場所を選ばずにどこからでも操作可能なクラウドシステムツールの導入が対象となります。

③補助金額

導入の内容によってA類型とB類型とC類型に分類がされます。A類型の補助金額は30万から150万円未満、B類型の補助金額は150万から450万円で、いずれも導入費等の1/2以下となっています。
C類型は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて新たに設けられた分類で、C類型の補助金額は30万から450万円で、導入費等の2/3以下となっています。

2.特別枠!C類型とは

従来のIT導入補助金はA類型とB類型のみでしたが、新型コロナウイルス感染症が事業環境に与えた影響への対策、拡大防止に向けて取り組む事業者によるITツールの導入を支援するためにC類型が創設されました。

①補助対象となる事業

補助対象となる事業は、サプライチェーンの毀損への対応として顧客への製品供給を継続するために必要なIT投資を行うもの、被対面型ビジネスモデルへの転換として非対面、遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルに転換するために必要なIT投資を行うもの、テレワーク環境の整備として従業員がテレワークで業務を行う環境を整備するに必要なIT投資を行うもの、とされています。

②特別枠C類型のスケジュール

C類型の交付申請期間は2020年5月11日(月)から受付開始、2020年12月下旬までとされています。
1次締め切りは2020年5月11日(月)から受付開始、2020年5月29日(金)17時までとされていて、交付決定日は2020年6月中が予定されています。

3.中小企業事業者の手続き手順

中小企業、小規模事業者がIT導入補助金を申請するには以下の手続きが必要です。

①IT導入支援事業者の選定、ITツールの選択、gBizIDプライムアカウントの取得の実施

補助金の交付申請を行う準備として、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。 また、交付申請にBizIDプライムアカウントが必要であり、gBizIDのホームページより取得をします。

②交付申請

IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。その後IT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け、必要事項を入力して事務局へ提出を行います。

③ITツールの発注、契約、支払い

交付申請を完了し、事務局から交付決定を受けた後に、ITツールの発注、契約、支払い等の補助事業を行います。

④事業実績報告

補助事業の完了後、実際にITツールの発注、契約、納品、支払い等を行ったことが分かる証憑を提出します。

⑤補助金交付手続き

事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると、申請マイページにて補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。

⑥事業実施効果報告

事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が申請マイページより必要な情報を入力し、IT導入支援事業者がIT事業者ポータルから代理提出を行います。

4.IT導入補助金が経費補助の場合の会計処理

IT導入補助金が入金された場合の会計処理方法をご紹介致します。入金がされた場合の会計処理方法はIT関連経費の補助とIT施設の導入補助によって異なります。

①経費補助の入金時の仕訳

IT関連経費の補助金が入金された場合は、下記のように仕訳を行います。 現金預金/雑収入

②経費補助の消費税の取り扱い

雑収入として計上されたIT導入補助金は消費税の課税対象となりません。

③経費補助の法人税の取り扱い

雑収入として計上されたIT導入補助金は益金として取り扱われ、法人税の課税対象となります。

5.IT導入補助金が施設導入補助の場合の会計処理

①施設導入補助の入金時の仕訳

IT施設の導入に補助金が入金された場合は、上記のように雑収入として処理することに加えて、下記のように圧縮記帳にて仕訳を行うことも選択することが出来ます。 圧縮記帳をすることで収益に対して一定の金額を損失として計上することが出来ます。この損失を計上することにより、法人税の課税対象の利益は、圧縮記帳を採用しない場合と比較すると少なくなり、補助金を受け取った事業年度の法人税の納付すべき金額を減らす効果があります。圧縮記帳の方法は直接減額方式と積立金方式があります。

直接減額方式…現金預金/雑収入   固定資産圧縮損/固定資産

積立金方式…現金預金/雑収入

②施設導入補助の決算時の仕訳

圧縮記帳を行う場合は、その圧縮対象となったIT機器の減価償却の計上等が必要です。

・直接減額方式

減価償却費の計上を行います。減価償却費の計上額は固定資産の取得価額から圧縮額を差し引いたものを償却対象の金額として計算したものです。
減価償却費/固定資産(又は減価償却累計額)



・積立金方式

減価償却費の計上と、圧縮金の積み立てを行います。減価償却費の計上額は固定資産の取得価額そのものを償却対象の金額として計算したものです。圧縮金は補助金受取額を積み立て、かつ期末に減価償却期間と同様に取り崩しを行います。

減価償却費/固定資産(又は減価償却累計額)
繰越利益剰余金/圧縮積立金
圧縮積立金/繰越利益剰余金


②経費補助の消費税の取り扱い

雑収入として計上されたIT導入補助金は消費税の課税対象となりません。

③経費補助の法人税の取り扱い

雑収入として計上されたIT導入補助金は益金として取り扱われ、法人税の課税対象となりますが、圧縮記帳を採用することで課税の繰り延べをすることが出来ます。

6.まとめ

IT導入補助金と、その会計処理についてご紹介致しました。IT導入補助金はそれぞれの類型によって申請期限がありますので、検討をされる方は早めに検討を行い、IT導入支援事業者と詳細を詰めて実施をされると良いでしょう。
また補助金には雑収入として法人税の課税対象となりますが、課税の繰り延べの出来る圧縮記帳の採用により負担感を減らすことが出来ます。 ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

関連記事:
『新型コロナウイルスによる雇用調整助成金!その会計処理とは?』
『持続化給付金とは?支給対象の要件や給付金を貰った場合の会計処理について』

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。