今回は、新型コロナウィルス感染症の拡大により、大きな影響を受けた事業者が受け取れる持続化給付金についてご説明いたします。(中小法人等は最大200万円、個人事業者等は最大100万円)
名前の似た制度に、「休業協力金」「持続化補助金」といったものがありますが、異なる制度ですし、該当すれば併用して受給することが出来ますので、混同されないようにご留意願います。
持続化給付金は、令和2年5月1日から申請受付が開始しておりますが、令和3年1月15日まで受け付けています。現時点では自社が対象でなくとも、対象になることもありますので、あらかじめ要件を確認しておく必要があります。また、すでに対象となっている事業者もすぐに申請するよりも、少し待ってから申請したほうが給付金を多く受け取れる場合があります。是非、参考までにご一読いただければ幸いです。
※一度給付を受けた方は、再度給付申請をすることが出来ない点に注意しましょう。
1.給付の対象者要件
給付申請を行える対象者要件について解説いたします。まずは自社が給付金を受け取ることが出来るのか、対象者要件を見ていきましょう
持続化給付金の主な対象者要件は3つ、以下A~Cの要件を満たす必要があります。
A.資本金と従業者数の要件
中小法人の場合には下記の1が2どちらかの要件を満たしていればOKです。
1.2020年4月1日時点で資本金の額または出資の総額が10億円未満であること。
2.2020年4月1日時点で常時使用する従業員の数が2000人以下であること
個人の方はフリーランスを含む個人事業者が広く対象となりますが、原則確定申告の際に事業の申告を行っている必要があります。(青色申告、白色申告に制限はなくどちらでも申請可能です)
B.事業継続の要件
法人、個人にかかわらず、2019年以前から事業により事業収入を得ており、今後も事業を継続する意思があること、が必要となります。①2019年以前から事業により事業収入を得ていること、について
「2019年以前」とは2019年12月を含みますので、2019年12月までに事業を開始していて売上があればこの要件は満たしたことになります。
②今後も事業を継続する意思があること、について
既に廃業する気持ちを固めているにもかかわらず、それを隠して持続化給付金の支給を受け、その後すぐに廃業してしまうことは不正受給にあたる可能性がありますので、この点は注意が必要です。ただし、意思に反してやむを得ず廃業せざるを得ないような状況に陥ってしまうこともあり得ますが、そのようなケースは不正受給には該当しません。
C.売上高の減少要件
2020年1月以降、前年同月比で事業収入が50%以上減少した月が存在する必要がありますが、どの月を選ぶかは任意です。例えば、2020年5月に申請する場合には、2019年2月と2020年2月の売上を比較したり、2019年4月と2020年4月の売上を比較したりと、前年同月比を行う月は「任意のひと月」を選択することが出来ます。
個人事業主、中小法人であればA.Bの要件を満たす事業者は多いように思います。ポイントはCの売上高要件であり、損益推移表などを印刷して前年と今年の各月の売上高を比較してみるとわかりやすいのではないでしょうか。
2.受け取れる給付金額の計算と申請方法
給付要件を満たした事業者が、受け取ることのできる金額の計算方法について説明し、申請の流れについて解説いたします。給付要件に該当している場合は、次に受け取れる給付金額を計算してみましょう。
給付金の給付額は、「対象月」の属する事業年度の「直前の事業年度の年間事業収入」から、「対象月の月間事業収入に12を乗じて得た金額」を差し引いたものとする、とされています。
「対象月」とは、①給付要件のC.売上高の減少要件で用いた前年同月比で事業収入が50%以上減少した月として選択した「任意のひと月」のことを言います。この月が属している事業年度の前事業年度が、「直前の事業年度」になります。
具体的な計算例は以下URLに記載があり、給付額算定シミュレーションができるエクセルも添付されています。
出典;経済産業省
2019年1月以前から売上が存在する事業者は難しく考えず、とりあえず昨年と比べて最も売上が落ちた月(50%以上)を選び、その売上を12倍した金額を出してみましょう。(12倍するのは、最も売上が落ちた月の売上を年換算するためです。)
最も売上が落ちた月の売上を12倍(年換算)した金額と、前事業年度の年間売上高を比較して、その差額が(中小法人等は上限200万円、個人事業主等は上限100万円)持続化給付金として受け取ることのできる金額です。
どの月を対象月とするのかによって給付金額や給付対象の可否が異なります。計算した給付金額が200万円に達していない事業者や、現状では対象となっていない事業者の方も、もう一度確認したり、専門家にご相談されたりすることをお勧めいたします。
入金の時期を遅らせることにより売上を調整する、という方法は正しくありません。逆に、入金が多い月であっても、売上高が少なければ対象となるようなこともありまし、前述の方法は誤った計算方法になります。休業という対策を採られた事業者様は多くの方が対象になると思います。
弊所でも給付金申請の相談やサポートは5,000円~承っております。まずは概要についてお気軽に無料相談までご連絡くださいませ。
(持続化給付金の申請は、webサイト上で事業者様ご自身が行う必要がありますので、代理申請は行っておらず、事前相談や申請業務のサポートまでとなります。また、申請にあたって必要となる申告書や決算書の作成、提出業務は別途業務依頼を承っております。
支給対象者としての要件を満たし、支給金額が計算出来ましたら、続いて申請方法を確認してみましょう。
申請方法の具体的な流れは、以下経産省の申請webサイトに詳しく記載があります。
出典:経済産業省
添付URLの内容と重複になりますが確認まで
1.必要書類を準備
2.メールアドレスを登録して仮登録
3/仮登録したメールアドレスに届いたメールから本登録を行う
4.ID・パスワードを入力(設定)し、マイページを作成する。
5.マイページから申請情報を入力して、必要書類をアップロード
→事務局が書類審査、通常2週間程度で銀行口座に入金となります。
3.必要(添付)書類と例外的取り扱い
申請にあたり必要な書類と、必要書類の一部が無い、去年は開業していなかった、法人成りした、店舗別には売上が減少しているのに、会社全体では売上が減少していない、などのケースをご説明いたします。支給申請において最も重要となる「必要添付書類」を確認しましょう
中小法人の場合
1.確定申告書別表一の控え(収受日付印が押印されたもの)
※e-taxによる申告の場合には「受信通知」を添付
2.法人事業概況説明書の控え(両面)
3.売上情報がわかる資料
※2020年〇月と明確に明記されているもの
※エクセル、手書き、経理ソフトの売上データ可
4.通帳の写し
※通帳のオモテ面と通帳を開いた1.2頁目の両方)
※電子通帳など、紙媒体の通帳がない場合は画面コピー
※提出書類ではありませんが設立年月日や住所、資本金の額、代表者氏名などの記載欄がありますので、「履歴事項全部証明書(謄本)」もお手元にご用意いただくと良いと思います。そのほか、法人番号、従業員数、業種、決算月の記載欄がありますので、事前にご確認いただくと、よりスムーズに申請作業が進められると思います。
基本、上記1~4の書類の添付が必要となりますが、 イレギュラーなケースに対して例外的取り扱いが定められていますので、中小法人の手続きを中心にいくつかご紹介いたします。
直前の事業年度の確定申告が完了していない場合
現在、新型コロナウィルス感染症拡大の影響に配慮して、法人及び個人の確定申告期限の延長を認める柔軟な対応が採られています。 (例えば、本当は2020年1月決算で3月が申告期限だったが、まだ申告書を提出していないケースが存在すると思います。この場合、本来であれば期限後申告となり、ペナルティの対象ですが、特段の事情を踏まえ、所定の手続きに従った申請を行えばペナルティがありません。)このような場合には、
A.前々事業年度(2期前)の確定申告書類の控え
B.税理士の署名押印済みの前事業年度の事業収入証明書類
A,Bのいずれかを、1.確定申告書別表一の控えと2.法人事業概況説明書の控えの代用とすることが可能です。
前期確定申告はしているが、確定申告書に収受印がない場合
確定申告書を紙で提出した場合、提出と同時に控えを提出しないと収受印のある確定申告書別表一(控)を入手することができません。また、受け取ったが控えを失くしてしまった、どうしても見つからない、という場合もあるでしょう。そのようなときは、
A. 納税証明書を取得する
B. 税理士の署名押印済みの前事業年度の事業収入証明書類
例外的にA.Bいずれかの書類で代用とすることが可能とされています。
Aの納税証明書の取得方法についてはこちらをご参考ください。
※例外として認められる書類への税理士の署名・押印ですが、弊所では、事業概要や通帳確認を行い、複式簿記により計算書類を作成した結果のものでなければ署名押印は行っておりませんので、恐れ入りますが、ご相談にあたりまして、その点はご留意いただけますと幸いです。
2019年中に創業したため、比較する「前期」の売上がない場合
2019年中に設立した法人は、前事業年度(昨年)の売上高が12か月分存在しない可能性があります。このような場合には、前事業年度(昨年)の売上合計を、営業していた月数で割って12をかけて年換算したものを、前事業年度の売上高とします。
具体的な計算方法とイメージは、以下URLに記載があります。
月当たりの事業収入の変動が大きい、季節収入特例などその他特例と併せてご確認ください。
出典:経済産業省
※創業特例の場合、履歴事項全部証明書の提出が必要となります。
法人成りした場合
法人成り特例も上記URLのB-6に記載があり、給付額の算定式に特例があります。追加の添付書類として
・個人事業主時代の確定申告書と決算書
・個人事業の廃業届出書
・法人設立届出書
・法人の履歴事項全部証明書
まとめ
今回の持続化給付金は、虚偽申告や不正受給があった場合には給付金の返還に加えて年利10.95%という極めて高い利率の加算金が課されます。 虚偽申告や不正受給が悪質と判断された場合には、経産省のホームページで法人・個人の名称が公表される可能性があり、より悪質な場合には刑事告発を受けて起訴され、執行猶予無しの実刑判決となりますので、虚偽申告や不正受給は絶対にやめましょう。そもそも虚偽申告をする必要がないのに、虚偽・不正を行い問題となる場合もあるようです。冒頭で述べたように、持続化給付金の申請は令和3年1月15日まで受け付けています。それまでの間、対象月は任意に選ぶことができますので、制度を理解して効果的で正しい給付の申請を行いましょう。