新型コロナウイルス感染症の影響等により、当年度の損益が赤字になる事業を営む個人事業主の方もいらっしゃることでしょう。 青色申告者の個人事業主は、当年度に事業所得の赤字があった場合、それを他の所得と損益通算をすることや、翌年度以降に繰り越すことが出来ます。 今回は損益通算等の赤字の取り扱いについてご紹介致します。
この記事の目次
1.損益通算とは
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた赤字のうち一定のものについてのみ総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。一定のものとは、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得です。例えば個人事業主で、飲食店の経営による事業所得と、飲食店等が入っているビルのテナント家賃による不動産所得があり、新型コロナウイルス感染症の影響等により事業所得が赤字であった場合に、黒字である不動産所得と相殺した金額を、総所得とすることが出来ます。
2.赤字の繰越
上記でご紹介した損益通算を行っても、なお事業所得等に赤字がある場合は、その赤字金額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。例えば飲食店の経営のみを行う個人事業主の事業所得があり、当年度が新型コロナウイルス感染症の影響等により赤字であるマイナス100万円であった場合、当年度の課税所得金額は0円となり、所得税は課税されません。
この個人事業主の事業所得が、翌年度に黒字であるプラス300万円であった場合、赤字を繰り越すことで、次年度の事業所得は100万円を差し引いた200万円であり、繰り越しが無い場合と比較をすると、所得税は少なく計算がされます。
翌年度の事業所得が10万円であった場合等、繰り越しを行っても繰り越しの残高がある場合は、更に翌々年度の事業所得から差し引くことが出来ますが、差し引くことの出来る期間は3年間であり、3年後に繰り越しの残高がある場合は、その残高は切り捨てられます。
3.赤字の繰戻還付
繰戻還付は、その年に生じた純損失の金額の全部又は一部を前年度の所得金額から控除したところで税額を再計算すると差額の税額が還付となる場合に適用することが出来ます。例えば飲食店の経営のみを行う個人事業主の事業所得があり、当年度が新型コロナウイルス感染症の影響等により赤字であるマイナス100万円であり、前年度が黒字であるプラス100万円であった場合、その相殺により前年度に納付した所得税の一部について還付を受けることが出来ます。 また繰戻還付を請求することの出来る個人事業者は、当年度と前年度を共に青色申告を行っている人です。
4.各赤字の取り扱いの手続き
①損益通算
損益通算は、提出すべき確定申告書内に記載箇所があります。別途に損益通算を行うための申請書の提出等の手続きは必要ありません。②赤字の繰越
赤字の繰越は、提出すべき確定申告書内に記載箇所があります。別途に赤字の繰越を行うための申請書の提出等の手続きは必要ありません。③繰戻還付
繰戻還付は、純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書を作成し、税務署に提出を行う手続きが必要です。請求書の他に、請求額を計算するに当たり使用した計算明細書等がある場合は、その書類も添付資料として提出を行います。提出期限は当年度の確定申告期限内であり、提出期限が土、日曜日、祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。手数料は不要です。 純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書は国税庁のホームページ等から入手をすることが出来ます。
5.まとめ
新型コロナウイルス感染症の影響等により青色申告者である個人事業主の事業所得が、当年度赤字である場合に、上記のような取り扱いが出来ることをご紹介致しました。いずれも所得税において納付金額が少なくなる方法ですので、参考になさってください。ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。
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