新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員に対して給与とは別に見舞金を支払った事業者もいることでしょう。一般的に従業員に経済的利益を支給した場合は給与に該当をしますが、この見舞金はどのように取り扱うべきなのでしょうか。
今回は新型コロナウイルス感染症の影響による見舞金の取り扱いについてご紹介致します。
- 1.給与に該当するとは
- 2.新型コロナウイルス感染症の影響による見舞金の取り扱い
- 3.心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものとは
- 4.見舞金の支給額が社会通念上相当であることとは
- 5.役務の対価たる性質を有していないこととは
- 6.まとめ
1.給与に該当するとは
①給与所得には所得税が発生する
給与に該当をするということは、給与所得に該当することと同義であり、所得税が発生をします。所得税が発生するということは、その額面金額を全額支給することが出来ません。事業者は給与に該当するものについては、従業員へ支給の際にその所得税額を計算し、その金額を差し引くという源泉徴収を行って支給しなくてはなりません。源泉徴収を行うという事務上の負担が生じます。
従業員は給与に該当するものは、源泉徴収が行われるため、額面の全額を受け取ることが出来ません。
このように所得税の観点からすると、同じ額面のものを支給する際には、給与に該当をする方が、事業者、従業員共に不利となります。
②非課税所得とは
個人が得る収入は原則として、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分類され、所得税が課税されます。しかしどれにも属さずに所得税の課税がされない収入があります。これを非課税所得といいます。
2.新型コロナウイルス感染症の影響による見舞金の取り扱い
新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員に対して給与とは別に見舞金が支払った場合は、下記の要件を満たすことで非課税所得として取り扱われます。要件は下記の通りです。
①その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること
②その見舞金の支給額が社会通念上相当であること
③その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと
3.心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものとは
上記3-①の要件である心身に加えられた損害とは、従業員本人が新型コロナウイルス感染症を患った場合や、緊急事態宣言がされる前と比較して、心身に負担が大きく生じたと認められる場合等をいいます。また資産に加えられた損害とは、従業員家族に新型コロナウイルス感染症を患った人がいるために家財を破棄しなくてはならなくなった場合等をいいます。
4.見舞金の支給額が社会通念上相当であることとは
上記3-②の要件である、見舞金の支給額が社会通念上相当であることとは、常軌を逸脱したような高額な金額は認められないということです。高額であるかの判断は、見舞金の支給額が、従業員等ごとに新型コロナウイルス感染症に感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが従業員の慶弔規程等において明らかにされているか、過去の慶弔金の取り扱いと比較して同等の取り扱いになっているか等で行います。
5.役務の対価たる性質を有していないこととは
上記3-③の要件である、役務の対価たる性質を有していないこととは、下記のようなものを除いたものをいいます。
①本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの
②感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの
③感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者にのみ支給するもの
④支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの