2020年6月まで行われていたキャッシュレス・ポイント還元事業。
キャッシュレス決済の活用により、その還元を受けた事業者も多くいることでしょう。
この還元分の会計処理はどのように行えば良いのか、その方法についてご紹介致します。
この記事の目次
1.即時還元の場合
即時還元とは、キャッシュレス決済を利用し購入時にその場で値引きを受けることで還元を受けるものです。 例えば3,000円の消耗品を購入し、その場で5%分の還元を受け、購入時の支払額が2,850円だった場合は、下記のように仕訳を行います。①キャッシュレス決済の決済金がクレジットカード等、後日精算される場合
購入時:
消耗品費3,000円/未払金2,850円
/雑収入150円
決済時:
未払金2,850円/現金預金2,850円
②キャッシュレス決済の決済金がカードチャージ方式等、事前精算している場合
決済時:
消耗品費3,000円/前渡金2,850円(チャージ残高を管理している勘定科目)
/雑収入150円
2.後日還元の場合
後日還元とは、キャッシュレス決済を利用し、購入時にその場では値引きされず、決済時に値引きを受けることで還元を受けるものです。例えば3,000円の消耗品を購入し、決済時に5%分の還元を受け、決済時の支払額が2,850円だった場合は、下記のように仕訳を行います。
購入時:
消耗品費3,000円/未払金3,000円
決済時:
未払金3,000円/現金預金2,850円
/雑収入150円
3.キャッシュレス決済に係る仕訳は総額表示
一般的な仕訳と同様に、キャッシュレス決済に係る仕訳は還元分を相殺せずに総額で表示を行います。上記の例のように、消耗品費3,000円、雑収入150円とそれぞれ表示をするべきであり、相殺をした消耗品費2,850円と表示を行う方法は適切ではありません。損益計算書には総額主義の原則という会計原則があり、「費用及び収益は、総額によって記載することを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」と定められています。
これは総額表示を原則とすることで損益計算書により取引規模を明確にさせるためです。例えば、相殺表示を認めてしまうと収益が1,000万円、費用が500万円の事業者も、収益が3,000万円、費用が2,500万円の事業者も、相殺表示により利益のみを表示した場合にその金額は500万円と同じものになり、その取引規模の違いは分からなくなってしまいます。
このことから、原則として仕訳は総額表示を行います。
※総額主義の原則 会計法規集(㈱中央経済社)参照
4.雑収入の消費税の取り扱い
上記の仕訳のとおり、還元の収益を受けた金額については雑収入という勘定科目を使用します。 この雑収入は消費税の課税の対象外として取り扱い、その受け取りには消費税が含まれていないと判断します。消費税が課税される取引とは、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供と外国貨物の引取りです。 還元による収益は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡に該当をしません。消費税法では、「事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。」と定めており、国から受ける補助金と同様の取り扱いを行います。
※消費税法:国税庁HP参照
5.まとめ
キャッシュレス・ポイント還元事業による還元分の収益は、その収益を得た時点で不課税取引の雑収入として会計処理を行います。相殺して表示をすることや、課税取引として間違った仕訳を行わないように留意をしましょう。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。
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