新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員の感染症の罹患の有無の確認は、社内の職場環境の維持や対外的な商取引等において重要なこととなってきました。
新型コロナウイルス感染症の罹患の有無の確認として有効とされているPCR検査ですが、この費用を会社が負担し従業員に受けさせた場合、どのような会計処理が必要となるのでしょうか。
1.PCR検査費用の会計処理科目
PCR検査費用を会社が負担し、従業員に受けさせた場合、この支出された費用について会計処理をする勘定科目は、原則として福利厚生費です。あくまでも福利厚生費として処理が出来るものは、会社が費用の負担をする健康診断費用と同様に検査代のみです。PCR検査の結果、従業員に休業手当等を支給する場合には、給料手当という別の勘定科目を用いた会計処理を行う必要があります。
2.福利厚生費とは
福利厚生費とは全ての従業員を対象とした、社会通念上で常識の範囲内である費用をいいます。健康診断費用、PCR検査代等の従業員の健康維持のために支出する費用のみならず、慶弔見舞金、社員旅行費用等が該当をします。しかし健康診断費用、PCR検査代等であっても福利厚生費ではなく、給与手当として会計処理をしなくてはならない場合があります。
3.給与手当として処理すべきものとは
健康診断費用、PCR検査代等であっても福利厚生費に該当をせず給与手当として会計処理をしなくてはならない場合とは、一部の従業員のみを対象とした費用であるものや、常識の範囲外の費用であるものをさします。①一部の従業員のみを対象とした費用
健康診断費用、PCR検査代等の費用負担を全ての従業員や、正社員のみを対象として実施する等の明確なルールに則った人を対象者としたものではなく、役員のみの費用を負担する等の恣意的な対象者の選定を行った場合、これは福利厚生費には該当をしません。福利厚生費には該当をせず、一部の人が受ける特別な取り扱いとして健康診断費用やPCR検査費用代を会社が支給するという経済的利益の享受に該当をし、給与手当に該当をします。
②常識の範囲外の費用とは
会社が負担をする費用が常識の範囲内であるかについては、これまでの社内での慣習と照らし合わせて妥当と考えられる金額かどうかや、世間一般に公正妥当と認められる金額であるかによって判断をします。その費用が常識の範囲内ではないと判断される場合には、福利厚生費には該当をせず、給与手当に該当をします。
具体的に何円以上が常識の範囲ではないと判断する、という規定はありませんが、例えばPCR検査費用の場合、実際に医療機関等に支払う検査代金や購入した検査キット代を大きく上回るような金額を従業員の代わりに負担をした場合には、常識の範囲内の費用ではないといえるでしょう。
4.給与手当に該当をする場合
福利厚生費に該当をせず、給与手当に該当をした場合には、その費用の負担を受けた従業員には、その給与手当に対する所得税や社会保険料の負担が発生をします。費用の負担を行った会社では、所得税や社会保険料の負担に関する事務手続きの等の負担が発生をします。
従業員、会社共に福利厚生費に該当をせず給与手当に該当をするということは負担が増加することといえます。
5.まとめ
従業員のPCR検査費用を会社が支払った場合、原則として福利厚生費として会計処理を行います。健康診断等の取り扱いと同様の考え方です。 しかし一部の人に限定して検査費用を負担することや、検査代を大きく上回る金銭を支給した場合には、福利厚生費に該当をせず給与手当に該当をすることもあります。従業員のPCR検査費用を会社が支払う場合には対象者やその金額について留意をするようにしましょう。 ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。