確定申告において、事業に使用をする車両や器具備品等の減価償却資産を保有する個人事業主は減価償却費の計上が必要です。個人が減価償却を行うにあたり、特に注意したいことについてご紹介致します。
この記事の目次
1.減価償却とは
事業に用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。このような資産を減価償却資産といいます。減価償却資産の取得に要した金額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。使用可能期間は国税庁が定めています。
このように減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
例えば300万円の車両を購入し、使用可能期間が6年であるものに対する減価償却費は、定額法を採用した場合、300万円を6で分割した50万円が1年間に計上すべき減価償却費となります。
2.必要経費として計上をする時期
①使用可能期間が1年未満のもの又は取得価額が10万円未満のもの
その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。②取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産
一定の要件の下でその減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の1/3に相当する金額をその業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することが出来ます。③取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産
一定の要件を満たす青色申告者が、平成18年4月1日から令和4年3月31日までに取得した取得価額が10万円以上30万円未満の減価償却資産は、一定の要件の下でその取得価額の合計額のうち300万円に達するまでの取得価額の合計額をその業務の用に供した年分の必要経費に算入できるという特例を利用することが出来ます。3.個人が減価償却費を計上するにあたり注意したいこと
減価償却費は法人、個人共に認められている経費ですが、個人特有の注意すべきことがあります。①強制償却
法人は減価償却費の計上金額について原則として上限は求められているものの、上限以内であれば何円にしても問題がありません。赤字が見込まれる年度においてそれ以上の赤字が発生しないように減価償却を行わないということも選択することが出来ます。一方で個人事業主は必ず減価償却費の計上をしなくてはなりません。減価償却費の金額や計上の有無を法人のように選択することが出来ません。
②減価償却方法
法人は減価償却方法の変更に係る届け出を行わない限り、建物、建物附属設備、構築物については定額法、車両運搬具、機械装置、工具、器具及び備品については定率法、無形固定資産については定額法を減価償却方法として採用しています。一方で個人は減価償却方法の変更に係る届け出を行わない限り、全ての減価償却資産において定額法を採用することが求められています。また届け出を行って選択することが出来る方法は、車両運搬具、機械装置、工具、器具及び備品についての定率法のみです。
定額法とは毎年同じ減価償却費を算出するものであり、定率法とは毎年同じ率を減価償却資産の残存価額に乗じるもので、減価償却費は取得年度に高く、経過するごとに低くなっていくものです。
③家事按分
法人で取得した減価償却資産については原則として全て法人の事業のために使用されると考えられるため、家事按分を行いませんが、個人で取得した減価償却資産については事業に用いる部分と私的に用いる部分とに分ける家事按分が必要です。例えば事業と私用に50%ずつ使用している車両を保有している場合、その車両全体の一年間の減価償却費が50万円と算出される場合には、その全額を必要経費として申告するのではなく、50万円の50%に該当をする25万円が確定申告で申告すべき減価償却費となります。
4.まとめ
上記のように減価償却には様々な注意をするべき事項があります。そもそもこれは減価償却資産になるのか?耐用年数は何年なのだろう?そんな様々な別の疑問も生じやすく苦手意識のある個人事業主の方も少なくありません。ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。
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