所得税における総合課税、申告分離課税、源泉分離課税の違い
税務・財務


所得は総合課税制度、申告分離課税制度、源泉分離課税制度のいずれかの適用によって所得税が計算をされます。
最も一般的な制度は給与所得者や事業所得者、不動産所得者に対して適用される総合課税制度ですが、全ての所得に対して同様に適用をされるものではありません。特に給与所得者が土地建物を譲渡した等といった例年とは違う所得が発生した年には注意が必要です。
今回はこれらの課税制度の違いについてご紹介致します。

この記事の目次

1.総合課税制度

①総合課税制度とは

総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算するものです。

②対象となる所得

下記に該当をする所得が総合課税制度の適用により所得税額を計算します。

・利子所得(源泉分離課税とされるもの及び平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く)
・配当所得(源泉分離課税とされるもの、確定申告をしないことを選択したもの及び、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当について、申告分離課税を選択したものを除く)
・不動産所得
・事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く)
・給与所得
・譲渡所得(土地建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く)
・一時所得(源泉分離課税とされるものを除く)
・雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く)


③税額の計算

上記②に該当をする所得の金額を一定の方法により合計した総所得金額から、所得控除の合計額を控除し、その残額に税率を乗じて税額を計算します。

2.申告分離課税制度

①申告分離課税制度とは

所得税は、各種の所得金額を合計し総所得金額を求め、これについて税額を計算して確定申告によりその税金を納める総合課税が原則です。しかし一定の所得については、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算します。これを申告分離課税制度といいます。

②対象となる所得

下記に該当をする所得が申告分離課税制度の適用により所得税額を計算します。

・山林所得
・土地建物等の譲渡による譲渡所得
・株式等の譲渡所得
・平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等に係る利子所得
・一定の先物取引による雑所得



③税額の計算

上記②に該当をする所得の金額に対して、その所得毎に税率を乗じて税額を計算します。

3.源泉分離課税制度

①源泉分離課税制度とは

源泉分離課税制度とは、他の所得と全く分離して、所得を支払う者がその所得の支払の際に一定の税率で所得税を源泉徴収し、それだけで所得税の納税が完結するというものです。

②対象となる所得

下記に該当をする所得が源泉分離課税制度の適用により所得税額を計算します。

・利子所得に該当する利子等(総合課税又は申告分離課税の対象となるものを除く)
・私募の特定目的信託のうち、社債的受益権の収益の分配に係る配当
・私募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る配当
・懸賞金付預貯金等の懸賞金等
・定期積金の給付補填金、貴金属等の売戻条件付売買の利益、一定の契約により支払われる抵当証券の利息等の次の金融類似商品の補てん金等
・一定の割引債の償還差益


③税額の計算

上記②のうち一定の割引債の償還差益以外は、収入金額等の20.315%が源泉徴収をされます。一定の割引債の償還差益は、償還差益の18.378%が源泉徴収をされます。

4.事例による計算方法の違い

上記のように総合課税、申告分離課税、源泉分離課税では計算方法が異なることから、複数の種類の所得がある場合には個別に計算を行う必要があります。 例えば事業所得と不動産所得、土地建物等の譲渡による譲渡所得、利子所得がある人の場合をご紹介致します。

①総合課税制度による所得税の計算

上記のうち総合課税制度の対象となる所得は事業所得と不動産所得です。事業所得と不動産所得が100万円ずつあった場合には、この事業所得と不動産所得を合計した200万円が合計所得金額となります。
これに対して基礎控除額48万円を差し引いた152万円が課税される所得金額となり、152万円に所得税率5%を乗じた7.6万円が所得税となります。

②申告分離課税制度による所得税の計算

上記のうち申告分離課税制度の対象となる所得は土地建物等の譲渡による譲渡所得です。譲渡所得が100万円あり、これが取得から5年経過前に売却を行った短期譲渡所得である場合には、100万円に所得税率30%を乗じた30万円が所得税となります。

③源泉分離課税制度による所得税の計算

上記のうち源泉分離課税制度の対象となる所得は利子所得です。利子所得には預金に対する利息が該当をしますが、利息の入金時に既に所得税は差し引かれています。つまり総合課税制度や申告分離課税制度のように所得を得た人が所得税を計算する必要は無く、確定申告をする必要はありません。

④事例での確定申告での納付額

このように、①と②が所得を得た人が確定申告で申告すべき所得となります。①の総合課税制度により計算をされた7.6万円と②の申告分離課税制度による計算をされた30万円の合計額である37.6万円が納付すべき所得税額となります。 またこの37.6万円の所得税額には2.1%の復興特別所得税が加算され、100円未満を切り捨てた38.38万円が所得税及び復興特別所得税の納付額となります。

5.総合課税制度、申告分離課税制度、源泉分離課税制度と分かれている理由

総合課税制度、申告分離課税制度、源泉分離課税制度と分かれていることで所得によって税金の計算方法が異なり、納税者の立場からすると計算が大変であり管理が難しいと感じられるかもしれません。しかし課税制度が分かれていることは納税者にとってメリットもあります。
総合課税制度と申告分離課税制度に分かれていることは、一律に所得の合計額に対して高い税率を適用されて多くの納税必要となることを回避することが出来ます。

例えば上記の例では総合課税制度に対しての所得税率は5%でしたが、所得金額に応じて所得税率は最高45%まで存在します。事業所得と不動産所得に対して所得税率45%が適用をされる人が、短期譲渡所得を得た場合、申告分離課税制度が設けられていなければ、短期譲渡所得にも同じ45%が適用されてしまい、申告分離課税制度による30%の所得税よりも多くの税金の支払いを求められてしまいます。

保有をしていた土地や建物を売却した場合、その値上がり益はその年だけで発生したものではなく長期間をかけて値上がりしたものであることから、他の所得と合算して同じように総合課税制度を適用し高い税金の支払いを求めることは不公平だと考えられています。

このように総合課税制度と申告分離課税制度に分かれていることは、納税者の多額の税金の納付負担を回避することが出来るというメリットがあります。
また所得の種類に応じて異なる税金の計算が必要となる課税制度である、申告分離課税制度と源泉分離課税制度が分かれていることも納税者にとってメリットがあります。

源泉分離課税制度が無ければ、納税者は源泉分離課税制度の対象となる所得を得た場合に都度申告を行う必要があります。
例えば預金利息等の利子所得は、源泉分離課税制度が設けられていなければ、預金を保有する人の全てが所得税の計算を行い確定申告にて所得税を納付する必要があります。つまり日本の殆どの人に確定申告を行う義務が発生します。
つまり源泉分離課税制度があることで、多くの人が確定申告をしなくても良いというメリットがあります。

6.まとめ

上記のように所得は総合課税制度、申告分離課税制度、源泉分離課税制度のいずれかが適用され、所得税が課税されています。
どの制度を適用して所得税の計算を行うべきか等、確定申告についてお困りのことがございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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