最初が肝心 ! 資本政策の「失敗あるある」から学ぶ資本政策の本質
税務・財務

この記事の目次

スタートアップにおける資本政策の現状


ご承知の通り、資本政策の重要性はアーリーステージからとしばしば言われる通りタイミングと順番を間違えるとかなり致命的な事象となります。

すなわち資本政策はファイナンスのみならず人材開発とガバナンス確立に欠かせない戦略そのものであり、アクションを起こす前に知識を具備しておくのが定石ですが、実際には驚くほど多くのケースで判断を間違える事例が見受けられます。

残念ながら、資本政策のアドバイザーは絶対数も少なく、しかも助言内容が良質でなく、いざ実務が発生するというときには手遅れ、あるいは適格な判断に窮する、というのがベンチャー経営者の大きな悩みとなっているのが現実です。

したがって、弊社では、IPOやM&AなどのEXITを目指す未公開企業に対して、適正かつ個社別にテーラーメイドの資本政策アドバイスを行い、資金調達とインセンティブの際に有効かつ効果的な有価証券である有償新株予約権や種類株式を正しくご理解いただき、株主・投資家とのWin-win関係構築に貢献しています。

資本政策の3つの目的

資本政策には大きく3つの目的があります。

1. 絶え間なく企業価値を向上させること、すなわち本質的な株価を上げること

2. 各ステージに応じたガバナンスの確立、すなわち株主構成の適格化

3. 成長に沿って求められる主なステイクホールダーとのコミュニケーション

資本政策の「失敗あるある」


まずは、資本政策において、よくある失敗例をまとめてみました。

(1)複数の創業者が等分の議決権の維持にこだわりすぎて分裂した

(2)初期段階でエンジェルに過分な株数を渡してしまい経営が行き詰まる

(3)株式による資金調達をあまりにもシード・アーリーで安値で行ったため、次のファイナンスに必要な株券が手元にない

(4)株式による資金調達をあまりにもシード・アーリーで高値で行ったため、次のファイナンスに必要な投資家が現れない

(5)資金調達に入りたいが株価の設定や適正な議決権分配がわからず、あまりにもローテクな株価の決め方に違和感はあったものの受け入れた。

(6)契約書に関して専門家のアドバイスを有償で手当てしなかったので、一方的に当方に不利な権利関係となり、事実上の支配権を失う

(7)ファイナンスに夢中で、従業員向けインセンティブが後回しになり、行使価格が高くなりすぎた

(8)ストックオプションの税制や会計に知識がなく、使えないオプションを設計した

(9)ストックオプションを株価が低位の際に分配しすぎてデメリットが顕在化した

(10)上場時の売出しの仕組みを知らないため、公正な利益配分ができない


なぜこのようなことが起こるかについては、当然裏側に普遍的なロジックや因果関係があるはずです。次の章からは資本政策の考え方からEXITの考え方まで、基礎をしっかりまとめてみたいと思います。

資本政策とは


資本政策とは「主にはベンチャーオーナーの議決権の希薄化をフェアにコントロールすること」です。

成長の節目となるEXITに向かって外部株主から資金調達するほど、また、役職員にインセンティブを施すほど、創業者やオーナーを含む既存株主の持株比率は低下するため、 次の①と②の課題は、トレード・オフの関係にあります。

① 事業戦略・事業計画から導き出された論理的な資金調達の実現
② ガバナンスの観点から死活的な株主構成(役職員報酬制度含む)の実現

資本政策の意義は、上記課題を戦略的に策定・解決する、ということです。

■ 留意点
上場準備会社は、証券会社やベンチャーキャピタルなどの投資家から提案を受け資本政策を実行していくことが一般的な模様です。
しかしながら、この場合の資本政策は、上場時と上場後の状況を想定して行われ、具体的な提案は上場2~3年前にようやく提案されるのが通常です。
従って、それ以前の段階では、ほとんど緻密な議論をせず、想定すべき事項の目的や見込まれる効果を理解しないままに第三者割当増資やストックオプション発行を実行することが多く、結果様々な歪みが出てくるということです。


EXITの考え方


EXITとは「流動性の無い未公開企業の株式を所有する既存株主(オーナー、役職員含む)が、 保有株式を売却して換金をする場所を与えること」です。

ここで問題になるのは、ベンチャーエコシステムの構成員が持つ相互利益相反です。

(1)共同経営者、役職員、エンジェル、機関投資家(VC)、事業会社、等利害関係者の数が増えるほど、多様性が増すほど、より利害が複雑化する

(2)時間軸が進むごと、企業価値(株価)が増すにつれ、ファイナンス事情はより複雑になり、投資家同士の利益相反が顕在化する

(3)種類株式の導入が一般的になり、リーガルエンジニアリングの戦いになる

(4)EXITの形態が、IPOに限定されずM&Aが主流となっていくとなればすべてのステークホールダーが相手を出し抜くゲームとなるのは当然

(5)EXITは事業承継や人生の最後まで延々と続くことが認識されていない

投資家との利益相反性


まず、調達金額は株価と株数のバランスで決定されます。

調達金額(F) = 株価(P) × 株数(N)

ここでまず問題になるのはValuationに明確な根拠がない、という点です。そもそも自社の本質的企業価値=株価はいくらなのか、という点で合意形成をすることが必要ですが、そこのサイエンスがないと株価が決定できません。

次に、株式とは議決権であり、当然創業者やオーナーは株式比率を高めたい=株価を上げたい、と考えます。逆に投資家側はなるべく株価を抑えて、調達額に必要な株数を増やすことで株式比率を高めようとします。ここにまた利益相反が発生します。

それではそもそもどのように企業価値を評価すればよいのか、という点ですが、いくつかの手法があります。

企業価値評価手法


株式価値を評価する手法には多様なものがありますが、一般的には大きくインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの三つに分類されます。各評価アプローチの概要と、それぞれのアプローチに属する主な評価方法は以下のとおりです。

■ インカム・アプローチ(収益方式)
評価対象会社から期待される利益ないしキャッシュ・フローに基づいて価値を評価する方式。
将来の収益獲得能力を 価値に反映させやすく、対象会社がもつ固有の価値を示す。
主な評価方法として、収益還元法、DCF法(※)、配当還元法等がある。

■ マーケット・アプローチ
評価対象会社の市場株価の分析、類似上場会社や類似取引事例などとの比較によって価値を評価する方法。
市場において成立した価格や取引に基づく評価アプローチであり、市場の取引環境を反映するとともに、客観性重視。
主な評価方法として、市場株価法、取引事例法、株価倍率法(類似上場会社方式)等がある。

■ ネットアセット・アプローチ
主として対象会社の貸借対照表上の純資産に着目した方式であり、株式会社の評価方法としてのネットアセット・アプローチは、純資産法と同義である。

評価手法選定としては、入口(シード、アーリー)は純資産簿価、出口(IPO、M&A)はマルチプル、その間の基幹は本来はDCF、であるが、DCFが実務で論議の対象になることはほぼ皆無であり、このことが数々の問題を引き起す本質的な原因になっているといえます。

※ DCF法とは
ある収益資産を持ち続けたとき、それが生み出すキャッシュ・フローの割引現在価値をもって、その理論価格とすることにある。たとえば、株式ならば企業の将来キャッシュ・フローを一定の割引率を適用して割り引いた割引現在価値をもって理論株価とする。評価方法の種類別では、インカムアプローチと呼ばれる方法に区分される。

引用元:Wikipedia



このように、資本政策を考える際には注意すべき点がたくさん存在します。これらをすべて理解して資本政策を組むことができればいいのですが、はじめから最適な資本政策を作ることは現実的ではないと思います。会社の将来のためにもはじめはプロに相談することをおすすめします。

弊社は多くの事例を元に、最適な資本政策のアドバイスをすることが可能です。まずはお気軽にご相談いただければと思います。

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