監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告の改正
税務・財務

日本監査役協会及び日本公認会計士協会は、2021年4月14日付けで、「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告(以下、「共同研究報告」という。)」の改正を行っています。 今回の共同研究報告の改正は、主に前回2018年1月の改正以後に行われた監査基準の改訂や監査基準委員会報告書の改正などの状況の変化を踏まえて、内容の見直しを行ったものとなっています。
主な改正内容は以下の通りです。

この記事の目次

1.監査基準の改訂による改正

監査基準の改訂を踏まえ、共同研究報告「2.監査役等と監査人との連携と効果」に、「①監査基準等における関連規定」の項目が新設され、以下の内容が掲載されました。

項目 細目 取扱い
監査基準等における関連規定 監査基準における規定 新設
不正リスク対応基準における規定 会社法における関連規定の箇所から移動
内部統制監査の基準における規定 会社法における関連規定の箇所から移動

なお、新設された「監査基準における規定」では、特に最近の監査基準の改訂に含まれる、①監査上の主要な検討事項(英語表記で「Key Audit Matters」、以下、「KAM」という。)の導入、②監査人が監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書を除いた部分の記載内容(以下、「その他の記載内容」という。)に関する監査役等と監査人の役割の追加、を踏まえ監査役等と監査人は年間を通じての監査の過程において、より一層密接なコミュニケーションが求められ、またその重要性が増しているとしています。

2.監査基準委員会報告書260(監査役等とのコミュニケーション)の改正による改正

監査基準委員会報告書260(監査役等とのコミュニケーション)の改正を踏まえ、共同研究報告「4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示」に以下の記載が追加されました。

追加された項目 追加部分と連携の時期
監査人に関する重要な事項(規制当局又は日本公認会計士協会による懲戒処分等の内容、第三者によるレビュー・検査の結果等を含む。) 左の項目の下線部分
(1)監査契約の新規締結時 ①監査人の状況及び品質管理体制(不正リスクへの対応を含む。)
左の項目の全体
(6)随時

3.監査基準委員会報告書701(独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告)の公表による改正

監査基準委員会報告書701(独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告)の公表を踏まえ、以下のKAMに関する項目が追加されました。

追加された項目 内容 共同研究報告での掲載箇所
KAMの選定過程 監査の過程で監査役等と協議した事項から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに職業的専門家として特に重要であると判断した事項をKAMとして決定(監査基準第四報告基準七監査上の主要な検討事項1) 2.監査役等と監査人との連携と効果
KAMに関するコミュニケーション項目 会社法上の監査報告書におけるKAMの任意適用の有無 4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示(1)監査契約の新規締結時①監査人の状況及び品質管理体制(不正リスクへの対応を含む。)
KAM候補(又は選定されたKAM)の事項の状況とその対応及び当該事項についての記載内容(又はKAM候補から除外すべき事項) 4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示(3)監査計画の策定時から(5)期末監査時、(6)随時

4.監査基準委員会報告書720(その他の記載内容に関連する監査人の責任)の改正による改正

監査基準委員会報告書720(その他の記載内容に関連する監査人の責任)の改正を踏まえ、その他の記載内容に関連する監査人の責任に関する項目が追加されました。

追加された項目 共同研究報告での掲載箇所
その他の記載内容を構成する文書並びにその発行方法及び発行時期の予定 4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示(3)監査計画の策定時
監査人の監査報告書の記載内容
〇その他の記載内容についての監査人の通読及び検討の結果
4.連携の時期及び情報・意見交換すべき基本的事項の例示(5)期末監査時
有価証券報告書及び内部統制報告書に関する事項
〇修正されたその他の記載内容の重要な誤りに関する事項
監査役等の取締役の職務の執行の監視の状況
〇その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用の監視の状況

まとめ

監査役等と監査人との連携については、KAMの開示、その他の記載内容に対する監査人の手続きの明確化や監査報告書への記載などにより、より一層密接なコミュニケーションを求められ、またその重要性が増しています。なおそれぞれの項目については、改訂された監査基準や改定された監査基準委員会報告書にそれぞれ記載されており一箇所にまとめられているわけではないため、連携内容を網羅的に把握するにはこの共同研究報告を利用されることが便利だと思います。
最後に、主な項目の適用時期について以下に記載しましたので参考にしてください。

項目 適用時期
KAM 2021年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。ただし、2020年3月31日(米国証券取引委員会に登録している会社においては2019年12月31日)以後終了する事業年度に係る監査から早期適用することができる。
その他の記載内容 2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。ただし、2021年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から早期適用することができる。
監査人に関する重要な事項(規制当局又は日本公認会計士協会による懲戒処分等の内容) 2019年4月1日以後通知を受けたものを対象として伝達する。

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