令和3年の税制改正でこう変わる!退職金の所得税
税務・財務


勤務先から受け取る退職金は、あらかじめ所得税を勤務先が算出をし、他の給与と同様に勤務先が所得税を差し引いた額が支給されます。
この所得税の計算方法が、令和3年の税制改正により、勤務期間が短い人に対して変更されることとなりました。今回は、この退職金に係る所得税の税制改正についてご紹介致します。

この記事の目次

1.現在の退職金に対する所得税の計算方法

退職金に係る所得税は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであること等から、退職所得控除を設け、他の所得と分離して課税される等、税負担が軽くなるよう配慮され、下記の算式で計算をします。
(退職金△退職所得控除)×1/2×所得税率△控除額=所得税額

①退職所得控除とは

退職所得控除は、退職金に対して課税されない一定の金額のことをいい、下記の算式で計算をします。

・勤務期間が20年以内…40万円×勤務年数
・勤務期間が20年超…800万円+70万円×(勤務年数△20年)


②所得税率と控除額

所得税率と控除額は、退職金から退職所得控除を差し引き1/2を乗じた課税退職所得毎に定められており、下記の通りです。

・1,000円から1,949,000円まで…所得税率5%、控除額0円
・1,950,000円から3,299,000円まで…所得税率10%、控除額 97,500円
・3,300,000円から6,949,000円まで…所得税率20%、控除額 427,500円
・6,950,000円から8,999,000円まで…所得税率23%、控除額636,000円
・9,000,000円から17,999,000円まで…所得税率33%、控除額1,536,000円
・18,000,000円から39,999,000円まで…所得税率40%、控除額2,796,000円
・40,000,000円以上…所得税率45%、控除額4,796,000円


2.税制改正での変更点

令和3年度税制改正では、短期の勤務期間の人に支給される退職金に係る所得税が増額されました。この税制改正の適用は令和4年以降に支払われる退職金に対して行われます。

この増額が行われた背景には、長年勤めたことに対する表彰の意味合いをもつ退職金であるからこそ税負担が少なくなるようにされている仕組みを、そのような意図ではなく短期の所得として脱税、節税目的に悪用をする人がいることにあります。

短期の勤務期間の人に支給される退職金に係る所得税が増額される、とは、勤務期間が5年以下の人に退職金が支給される場合において、退職所得控除後の金額のうち300万円を超える部分は1/2を乗じずに課税退職所得が算出されることとなりました。

3.税制改正前と後の税額の違い

税制改正の内容を踏まえて、税制改正前の退職金に係る所得税を比較します。今回は従業員が4年で退職し、この退職者に対して800万円の退職金が支払われるものとします。

①税制改正前の場合

まずは退職所得控除を計算します。勤務期間が4年であるため、40万円に4を乗じた160万円が退職所得控除となります。 これを退職金800万円から差し引いた640万円に1/2を乗じた320万円が課税退職所得です。

この320万円の課税退職所得に対する所得税は、所得税率10%を乗じて97,500円の控除額を差し引いたものとなるため、222,500円となります。

②税制改正後の場合

税制改正後も退職所得控除は変わらず160万円です。これを退職金800万円から差し引いた640万円を計算するところまでは税制改正前と相違ありません。

しかし課税退職所得の計算が異なります。まず300万円までについては1/2を乗じるため、150万円と算出しますが、300万円を超えた340万円については1/2を乗じません。よって150万円と340万円を合算した490万円が退職所得となります。

この490万円の課税退職所得に対する所得税は、所得税率20%を乗じて、427,500円の控除額を差し引いたものとなるため、552,500円となります。

4.まとめ

上記のように、短期の勤務期間で退職をする人に支払われる退職金に対しては、所得税が増額されることとなりました。しかし300万円以上の支給に対しての増額であり、300万円未満の支給であれば影響はありません。

一方で多額の退職金が支払われる場合には、この計算を間違えると、所得税の徴収や納付に間違いが生じ、退職金を支払う勤務先が意図せず脱税をしてしまう恐れがあります。取り扱いには注意をしましょう。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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