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春の税務調査と、秋の税務調査の違いとは?
税務調査というのは、1年の中でも大きく2つの時期に分かれています。少しややこしい部分もあるので、税務署的な視点から解説しておきましょう。
国税という組織は、1年の始まりを7月としています。ちょっと変わっているので、一般的な考え方からすると、かなり違和感があるところです。
国税は1年を上期と下期に分けていますが、7月から始まりますから、
毎年7~12月:上期
1月~6月:下期
1月~6月:下期
となっています。
下期は少し特別で、個人の確定申告があります。確定申告は2~3月中旬までなのですが、この時期は税務調査に立会いする税理士も忙しく、また税務署内も確定申告の対応に忙しいという事情もあって、特別な事情などがない限り、確定申告時期に調査が行われることはありません。
こういう事情を考えると、大きく税務調査は「春の時期」と「秋の時期」に分けることができるのです(ちなみに、真冬は調査が少ない傾向です)。
ここにはさらに税務署内の事情が絡んできます。税務署の職員は、3年に1回程度の頻度で転勤(他の税務署に異動)するのですが、この転勤時期は7月上旬です。しかも、転勤になる調査官は、直前まで転勤になるかどうかを明示されていないのです。
ということは、春の調査と秋の調査には次のような違いがあるといえます。
【春の税務調査】
・時期が短い
・調査件数が少ない
【秋の税務調査】
・時期が長い
・調査件数が多い
・時期が短い
・調査件数が少ない
【秋の税務調査】
・時期が長い
・調査件数が多い
春の税務調査の方が有利
税務署の職員は7月上旬に転勤(異動)があり、誰が転勤になるのかも知らされていません。
またここが大事な点なのですが、税務調査を担当している調査官は、6月までで税務調査を締めなければならないのです。なぜなら、税務署の1年は6月に終了するからです。
ちょっとわかりにくいので、もう少し説明を加えましょう。
たとえば、11月に税務調査があったとします。調査の過程でいろいろな不明点なり、税務署と納税者(顧問税理士)に見解の相違があったとします。
そうなると税務調査は長引いていくのですが、年末までに終わらなかった調査は、(調査官からすると不本意かもしれませんが)年越しすることになります。
では、同じケースが春だったらどうなるのでしょうか。
5月に税務調査があったとします。同じように長引きます。しかし、かなり特殊な事情がある場合を除いて、7月まで延びる税務調査はありません。これは、
・税務署の1年の締めが6月末であること
・担当調査官が転勤になるかもしれないこと
・転勤にならなくても担当から外れること
・担当調査官が転勤になるかもしれないこと
・転勤にならなくても担当から外れること
の3つの事情に起因しています。
さらに、です。税務調査を担当している調査官には引継ぎがありません。普通の会社であれば、転勤・異動になれば仕事の引継ぎを行うのですが、税務調査は俗人的な判断をともなうことが多く、また実施している件数が多いため、本来は6月から7月の年度をまたぐ調査であったとして、引継ぎを行うことはありません。
ここまで書くと、気付く方も多いのですが、実は春の税務調査の方が対応は楽なのです。秋の税務調査と違い、春の税務調査が延々と長引くことはありません。しかも、6月までに税務調査を終わらせたいのは、こちら(納税者)側の都合ではなく、調査官側の都合なのです。
時期によって税務調査の交渉のやり方は変わります。6月まで延びた税務調査であれば圧倒的に有利になるといえるでしょう。
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