2021年より税務署長の承認が不要に!より簡単になった年末調整の電子化とは
税務・財務

2021年の税制改正によって、事業者が年末調整に関する書類を電磁的方法により従業員から受け取ることについて、これまでは税務署長の承認が必要でしたが、2021年4月1日以降に受け取る書類についてはその承認が不要となりました。

よって年末調整手続きを電子化するにおいて、事業者の負担が軽減されたといえます。今回は、この改正により簡単となった年末調整の電子化についてご紹介致します。

この記事の目次

1.年末調整手続きの電子化とは

これまでの年末調整手続きは、事業者が年末調整に必要な用紙を従業員に配付し、その用紙に従業員が手書きして提出する等、書面により行われていました。

年末調整手続の電子化とは、従業員が控除証明書等を電子データで取得し、それを利用して年末調整申告書データを作成すること及び事業者が年末調整申告書データ及び控除証明書等データの提供を受け、これを利用して年税額等の計算を行うことを実施することにより、年末調整手続をデータ処理することであり、これにより事業者と従業員双方の年末調整に係る事務負担を軽減するためのものです。

①書面での年末調整手続き

従来の書面での年末調整手続きは、下記の手順によって行われていました。

・従業員が、保険会社、金融機関、税務署等から控除証明書等を書面で受領
・従業員が、保険料控除申告書又は住宅ローン控除申告書に、上記で受領した書面に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入
・従業員が保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書を含む年末調整申告書を作成し、控除証明書等とともに事業者に提出
・事業者が提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算、控除証明書等の確認を行った上で、年税額を計算

②電子化後の年末調整手続き

年末調整手続きを電子化すると、下記の手順によって行うこととなります。

・従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領
・従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年調ソフトに、住所や氏名等の基礎項目を入力し、上記で受領した電子データをインポートして年末調整申告書の電子データを作成
・従業員が、年末調整申告書データ及び控除証明書等データを事業者に提供
・事業者が、従業員により提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算


2.税務署長の承認が不要となった年末調整に関する書類の一覧

上記のように、年末調整手続きを電子化すると、事業者は従業員より年末調整申告書データ及び控除証明書等データの提供を受けることになりますが、これまではこの提供を受ける行為について、税務署長の承認が必要でした。

しかし、2021年の税制改正により、税務署長の承認が不要となり、下記の申告書について2021年4月1日以降に受け取る場合に、この措置が適用されることとなりました。

①給与所得者の扶養控除申告書
②従たる給与についての扶養控除等申告書
③給与所得者の配偶者控除等申告書
④給与所得者の基礎控除申告書
⑤給与所得者の保険料控除申告書
⑥給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
⑦所得金額調整控除申告書
⑧退職所得の受給に関する申告書
⑨公的年金等の受給者の扶養親族等申告書


3.年末調整手続きを電子化するメリット

年末調整手続きは従業員を雇用する事業者が例年行うべき作業であることから、慣れ親しんだ書面での手続きから、その処理方法を変更することに抵抗がある場合もあるでしょう。しかし、年末調整手続きを電子化することには、様々なメリットがあります。

①事業者のメリット

事業者が年末調整手続きを電子化するメリットには、下記のものが挙げることが出来ます。

・従業員が年調ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となる
・控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減される
・従業員が年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問合せ事務が減少することが期待される
・書面による年末調整の場合の書類保管コストを削減することが出来る


②従業員のメリット

従業員が年末調整手続きを電子化するメリットには、下記のものが挙げることが出来ます。

・手書きによる手続を省略することが出来、年末調整申告書の作成を簡素化することが出来る
・年末調整申告書を電子的に作成し、データで提供するため、テレワーク等の際に書類を郵送で提出する必要が無い
・書面で提供を受けた控除証明書等を紛失した場合は、保険会社等に対し、再発行を依頼する必要があったが、その再発行の手間が不要となる
・マイナポータル連携を利用する場合には、複数の控除証明書等を一度の処理で取得することが出来るため、従業員の利便性がより高まる


4.年末調整手続きを電子化するための準備

上記のメリットを考慮し、年末調整手続きを電子化するためには、事業者、従業員共に、電子化のための環境を整える必要があります。

①事業者が行うべき準備

年末調整手続きを電子化するためには、下記の順に事業者は準備を行う必要があります。

・電子化の実施方法の検討…年末調整手続の電子化にあたり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアの選定、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするか等を検討します。
・従業員への周知…従業員から年末調整申告書及び控除証明書等について電子データにより提供を受けるに当たり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません。しかし、電子化にあたっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データの交付を受けるための手続等、事前準備が必要であることから、電子化する際には従業員への早期の周知が必要となります
・給与システムの改修等…従業員が提供する年末調整申告書データや控除証明書等データをご利用の給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うため、給与システムの改修等を行います。


②従業員が行うべき準備

年末調整手続きを電子化するためには、下記の順に従業員は準備を行う必要があります。

・年末調整申告書作成用のソフトウェア等の取得…保険会社等から取得する控除証明書等データを利用して年末調整申告書データを作成するための年末調整申告書作成用のソフトウェアを取得します。これは事業者の指示に従って行います。
・控除証明書等データの取得…具体的な取得方法は保険会社により異なりますが、保険会社等のホームページ等から、控除証明書データを取得します。


5.電子化への変更は早めの検討を

年末調整手続きの書面から電子化への移行は難しいものではありません。しかし移行初年度においては、事業者は年末調整申告書作成用のソフトウェアの選定、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするか等を検討する必要があること、従業員はマイナポータル連携利用によって年末調整手続きを行う場合には、マイナンバーカードを取得するための期間や、民間送達サービスの開設のために要する期間が必要となることから、早めの導入の検討を行う必要があります。

6.まとめ

上記のように、事業者が給与所得者の扶養控除申告書等を従業員から電磁的方法で受け取ることについて税務署長の承認が不要となったことから、従来と比較をすると、年末調整手続きの電子化は負担の少ない作業となりました。
年末調整手続きの電子化は事業者、従業員の双方にメリットのあるものです。また新型コロナウイルス感染症の影響により、様々な手続きの電子化が推奨されています。是非ご検討ください。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

記事のキーワード*クリックすると関連記事が表示されます

メルマガ登録(毎週水曜配信)

SHARES LABの最新情報に加え、
経営に役立つ法制度の改正時事情報などをお送りします。