年末調整事務において必要となる、給与所得者の扶養控除等申告書等の各種の書類。従業員が多い会社では、これら書類が莫大な量となり、保管場所に困ってしまう会社も少なくありません。そもそも、これらの書類はいつまで保管すべき書類なのでしょうか?
今回は、給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間についてご紹介致します。
1.給与所得者の扶養控除等申告書等の保存義務と保存方法
給与所得者が、給与の支払者である源泉徴収義務者を経由して所轄税務署長に提出する扶養控除等申告書等については、所轄税務署長が提出を求めるまでの間は、当該源泉徴収義務者が保存することとされています。つまり、扶養控除等申告書等は法律上では税務署に提出すべき書類ではあるものの、双方の事務負担等の軽減のために、会社が税務署から提示を求められるまで、一時的に預かっておく必要がある書類です。
一般的には書面での保存が行われていますが、従業員から電子データで扶養控除等申告書等の情報が提出された場合には、会社は電子データのまま保存することを選択することも出来ます。
2.源泉徴収義務者が保存する申告書
年末調整において会社が保存するべき申告書は、下記に挙げるものです。
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
②従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
③給与所得者の配偶者控除等申告書(平成29年分以前は「給与所得者の配偶者特別控除申告書」)
④給与所得者の基礎控除申告書(令和2年分以降)
⑤給与所得者の保険料控除申告書
⑥所得金額調整控除申告書(令和2年分以降)
⑦退職所得の受給に関する申告書
⑧公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
⑨給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
3.給与所得者の扶養控除等申告書等の保存期間
給与所得者の扶養控除等申告書等の提出を受けた源泉徴収義務者は、その申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。4.なぜ7年間保存が必要なのか?
給与所得者の扶養控除等申告書等のみならず、会社は総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳等の帳簿を、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなくてはなりません。なぜ7年間であるのか、というと、給与所得者の扶養控除等申告書等や帳簿の提示が必要となる、税務調査の対象年数は基本的に3年、必要に応じて最大7年までが対象であるからです。この最大7年分の税務調査に対応をすべく、7年間の書類の保存が必要となります。
また税務調査の対象が最大7年であることは、国税の期間制限に起因をします。国税の法律関係において、国の行使し得る権利をいつまでも無制限に認めていては、納税者の法的安定が得られないばかりでなく、国税の画一的執行も期し難くなるので、これに対処するため、賦課権及び徴収権等に関する期間制限が設けられています。
賦課権の除斥期間は、税務署長が納税義務の確定手続を行うことができる期間であり、つまり会社に税金の計算間違いを指摘して税金を徴収することの出来る期間をいいます。その期間が7年であることから、それ以前の税金の計算間違いに対しては、税金が徴収出来ないこととされ、同時に7年以前の書類の保存が必要無くなります。
5.まとめ
上記のように、給与所得者の扶養控除等申告書等の年末調整に係る書類は、会社において7年間の保存が必要です。税務調査を受けた際に、保存が必要である書類が破棄されていたことが発覚をすると、何か会社が隠したい懸念事項があるのではないかと、怪しまれてしまいますし、思わぬペナルティを課せられる可能性もあります。
書類の保存期間や保存方法等、ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。