この記事の目次
- 中小企業関連の主な改正事項
- 中小企業等経営強化法について
- 中小企業の生産性向上のための固定資産税の特例の拡充
- 中小企業投資促進税制の適用期間延長
- 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用期間延長
- 中小企業経営強化税制の新設
- 中小企業技術基盤強化税制の拡充
- 所得拡大促進税制の見直し
- まとめ
配偶者控除の見直しや酒税の税率改正が目玉と言われていますが、中小企業の支援を目的とする改正も多く盛り込まれています。
中小企業関連の主な改正事項
中小企業庁の税制改正関連資料によると、以下5項目が中小企業関連の主な改正事項として取り上げられています。
(1) 中小・小規模事業者の「攻めの投資」を支援する税制措置の拡充
(2) 所得拡大促進税制の見直し
(3) 研究開発税制の拡充
(4) 中小企業企業者等の法人税率の特例の延長
(5) 事業承継を促す税制措置の見直し
参照 : 平成29年度税制改正の概要について(中小企業・小規模事業者関係)平成28年12月
(2) 所得拡大促進税制の見直し
(3) 研究開発税制の拡充
(4) 中小企業企業者等の法人税率の特例の延長
(5) 事業承継を促す税制措置の見直し
参照 : 平成29年度税制改正の概要について(中小企業・小規模事業者関係)平成28年12月
この5つの改正点について、要点である(1)を解説していきましょう。
1.「攻めの投資」を支援する税制措置とは
設備投資(※)や研究開発に対して特別償却や税額控除などの節税効果を与え、新しい取り組みが売上拡大につながっていくまでの資金繰りに配慮することで、中小企業の活性化を促す施策のこと
設備投資(※)や研究開発に対して特別償却や税額控除などの節税効果を与え、新しい取り組みが売上拡大につながっていくまでの資金繰りに配慮することで、中小企業の活性化を促す施策のこと
中小企業の設備投資に関連する今回の改正点は以下4項目があげられています。
(1)固定資産税特例の拡充
(2)中小企業経営強化税制の創設
(3)中小企業の投資促進税制の延長
(4)商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長
(2)中小企業経営強化税制の創設
(3)中小企業の投資促進税制の延長
(4)商業・サービス業・農林水産業活性化税制の延長
今回あらたに(2)中小企業経営強化税制が新設されました。
これは(3)の中小企業投資促進税制と(4)商業・サービス業・農林水産業活性化税制の枠組みに変更を加えたものになります。
これとともに、(1)固定資産税の特例の拡充にも関連するのが平成28年7月1日より施行された「中小企業等経営強化法」です。
中小企業等経営強化法について
中小企業等経営強化法とは
少子高齢化、人手不足が問題となるなか中小企業の経営課題解決や生産性向上の取り組みを促すために、税制面や金融面にわたり支援を行うための施策です。
中小企業が商工会議所や金融機関など支援機関の指導を受けながら、自社の経営力を向上させるための計画(「経営力向上計画」と呼びます)を作成し、それが国から認定されると設備投資に関わる固定資産税の軽減措置や政府系金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証が受けられます。
平成28年12月31日現在10,101件が認定事業者として上記の支援を受けています。
少子高齢化、人手不足が問題となるなか中小企業の経営課題解決や生産性向上の取り組みを促すために、税制面や金融面にわたり支援を行うための施策です。
中小企業が商工会議所や金融機関など支援機関の指導を受けながら、自社の経営力を向上させるための計画(「経営力向上計画」と呼びます)を作成し、それが国から認定されると設備投資に関わる固定資産税の軽減措置や政府系金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証が受けられます。
平成28年12月31日現在10,101件が認定事業者として上記の支援を受けています。
中小企業の生産性向上のための固定資産税の特例の拡充
これは、中小企業が平成30年度末までに新たな設備投資を行う場合に固定資産税の課税標準を3年間にわたり1/2に軽減するという制度です。
これまでの対象設備は「機械装置」として以下のようなものが指定されていました。
参照 : 対象設備例
改正点は、「器具備品」、「建物付属設備」として以下のようなものが加えられます。
対象となる中小企業
資本金1億円以下の中小企業者が対象となり、大企業の子会社は除かれます。 東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都は労働生産性が全国平均未満の業種※に限定し、それ以外の地域は全業種が対象です。
※一部の小売業、宿泊業、飲食店、理美容、自動車整備など(平成24年経済センサスによる)
必要な要件
中小企業等経営力強化法に基づき、 経営力向上のための計画(経営力向上計画)を作成し認定を受けることが必要です。
新規取得の設備による生産性の向上が、既存のものに比べて1%以上見込まれることが求められます。(工業会等の確認が必要)
中小企業投資促進税制の適用期間延長
中小企業が設備投資を行う際、指定の事業に対し指定の設備を新設する場合に税額控除が受けられる制度です。
中小企業投資促進税制については、当サイト内の2016年9月16日の記事で吉田公認会計事務所の吉田先生から解説をいただいております。
参照 : 中小企業が活用できる税額控除「中小企業等投資促進税制」を徹底解説 !
改正点は、平成29年3月末までの時限措置でしたが、平成30年度末までに延長されました。設備を導入し稼働させる(事業の用に供する)日が期間内に入ることが必要です。
商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用期間延長
商業、サービス業、農林水産業分野の中小企業が経営改善指導を行う機関の経営指導に基づき、一定の要件を満たす設備の取得を行う場合に、特別償却(30%)または税額控除(7%)が受けられる制度です。
改正点は、中小企業投資促進税制と同様に平成29年3月末が期限でしたが平成30年度末に延長されました。
中小企業経営強化税制の新設
中小企業投資促進税制の上乗せ措置(平成26年1月20日から)の対象となる業種を、新たにサービス業(商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象業種)に広げ、対象設備も「器具備品」、「建物付属設備」を加えて新設されたのが中小企業経営強化税制です。
中小企業等経営強化法の認定を受けることと、導入設備の生産性(A類型)または投資収益率(B類型)の向上の確認が必要となりますが、即時償却ができることがメリットになります。
認定され適用を受けるための経営計画の作成や申請手続きに関する知識など、専門家による支援が必要
中小企業技術基盤強化税制の拡充
税額控除により中小企業の研究開発を促すための制度です。
従来の制度については、当サイト内2016年10月4日の記事で吉田公認会計事務所の吉田先生から解説をいただいております。
参照 : 中小企業が活用できる税額控除「中小企業技術基盤強化税制」を徹底解説 !
改正点は1.上記「税額控除対象の条件 ③対象となる試験研究費」の 「製品の製造、技術の改良・考案・発明にかかる試験研究のために要する費用」に、「第4次産業革命型の新たなサービスの開発にかかる試験研究費用」として以下のようなサービス開発の事例が追加されました。
2.上記「税額控除対象の条件 ④税額控除できる金額」
現行制度の、試験研究費の12%を法人税額から控除(上限は法人税額の25%)と特別試験研究費(大学、国の研究機関との共同研究の場合)の20または30%を 法人税額から控除(上限は法人税額の5%)が、恒久措置としてベースになります。
改正点は、以下の30年度末までの時限措置が加えられました。 試験研究費の増加率が5%を越える場合、<12%+(増加割合ー5%)× 0.3 >を控除率とする。 試験研究費が売上高の10%を越える場合、a、bのいずれかを選択できる。
a、試験研究費の額が売上高の10%を越える部分について
<(試験研究費割合ー10%)× 0.2>を乗じて算出された額を控除額とする。
(上限は法人税額の10%)
b、法人税額に<(試験研究費割合ー10%)× 0.2>を乗じた額を控除限度額に上乗せする。
(上限は法人税額の10%)
所得拡大促進税制の見直し
賃上げを行った中小企業を税額控除により支援する制度です。
従来の制度については、当サイト内2016年9月16日の記事で吉田公認会計事務所の吉田先生から解説をいただいております。
参照 : 中小企業が活用できる税額控除「所得拡大税制」を税理士が徹底解説 !
改正点は、このなかの「条件①dの平均給与等支給額が、全事業年度を上回っている」に加え、上回っている率が2%を越えていれば、「条件③税額控除できる金額」のなかの「法人税額の10%」に12%上乗せされ22%相当額が税額控除の対象となりました。
まとめ
今回の税制改正のなかで、中小企業の設備投資、研究開発、賃上げにかかわる改正点を取り上げました。設備投資、研究開発は企業の成長に欠かせない取り組みです。
不明な部分が多い際や一緒に考えて欲しい ! などございましたら、一人で悩まず専門化の支援を受けるとよいでしょう。
SHARESには税制改正に強い先生が多数在籍しています。
参照 : SHARES HP
資金力に余裕のない中小企業でも、これらの中小企業向けの税制措置や中小企業等経営力強化法などの支援スキームを活用して「攻めの経営」が可能となります。是非、ご検討ください。
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