入社1年目は手取り額が多い⁈住民税のしくみ
税務・財務


多くの社会人が初めて給料を受け取る4月25日は、初任給の日と呼ばれています。実はその初任給の手取り額が、2年目の手取り額よりも多い場合があります。この理由のひとつに、入社1年目の給与からは住民税が控除されない、ということが挙げられます。
どうして入社1年目の給与からは住民税が控除されないのでしょうか。今回は、住民税のしくみについてご紹介致します。

この記事の目次

1.住民税とは

住民税とは、行政サービスの活動費に充てる目的で、その地域に住む個人に課す地方税のことです。
住民税には市町村民税と道府県民税があります。納税する際には、一括して各市町村に個人住民税を納めなければならず、道府県民税は各市町村によって、その道府県に払い込まれます。

2.住民税の課税対象

個人の住民税には、前年の所得金額に応じて課税される所得割、定額で課税される均等割り、預貯金の利子等に課税される利子割、上場株式等の配当等及び割引債の償還差益に課税される配当割、源泉徴収選択口座内の株式等の譲渡益に課税される株式譲渡割があります。

このうち、所得割と均等割が、給与を受け取っている人に直接関係をする住民税であり、前年の所得の金額に応じて課税をされます。

3.住民税の徴収と納付

個人住民税の納付の方法には、普通徴収と特別徴収があります。勤務先から給与を受け取っている人は原則として特別徴収が適用されます。
普通徴収とは、市町村が、納めるべき税額等を記載した納税通知書を納税義務者に送り、これに基づいて税金を徴収する方法をいいます。個人住民税では、納税義務者は毎年3月15日までに前年の所得を、自ら申告しなければなりません。その申告された所得等に基づき確定した税額が、納税通知書に記載されます。

特別徴収とは、納税義務者以外の者が、納税義務者から税額を徴収して、それを納税義務者の代わりに納める方法をいいます。個人住民税における納税義務者の代わりに住民税を納める者とは、給与等の支払をする会社等があたります。原則として、給与等が支払われる際に、その支払者がその給与等から差し引いて市町村に納めます。

4.入社1年目と2年目の住民税の違い

上記でご紹介しました通り、住民税は前年の所得の金額に応じて課税をされます。前年の所得の多寡により、当年の所得の多寡に関わらず、当年支払うべき住民税額が決定されます。
入社1年目の場合は、前年に住民税の課税される所得が無い、又は非課税の範囲内の所得しか得ていないため、1年目の給与から差し引くべき住民税が無いことが多いです。

一方で2年目の場合は、前年中の入社1年目の給与所得額に応じて住民税が給与から差し引かれることになります。2年目における昇給額が、差し引かれる住民税額を上回らない場合には、2年目の方が手取り額は少なくなります。

具体的には、前年1月1日から12月31日に得た所得に対して住民税が計算され、当年の6月から翌年の5月までの12回に分けて、毎月の給与から住民税が差し引かれます。

5.退職をした場合の住民税

給与等が支払われる際に、その支払者がその給与等から差し引いて住民税は市町村に納めますが、退職をし、給与等が支払われなくなったと同時に住民税の支払い義務が無くなるというものではありません。

既に前年1月1日から12月31日に得た所得に対して住民税が計算されているため、その納付方法が変わるだけであり、納税義務が免除されることは無いためです。
退職をした場合には、納めていない期間分の住民税を会社が最後の給与や退職金等から一括徴収をして特別徴収にて支払う、又は納めていない期間分の住民税を退職者本人が普通徴収にて支払う、若しくは退職後に転職先が決まっている場合には、転職先が住民税の情報を引き継いで特別徴収にて支払う、のいずれかの方法によって納めなくてはいけません。

6.まとめ

上記のような住民税のしくみにより、入社1年目の手取り額が2年目以降の手取り額よりも多い場合が往々にしてあります。この知識を備えておくだけで、2年目の給与支給時の心構えが出来るようになります。ご参考になさってください。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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