エンジェル税制とは、個人投資家がベンチャー企業に投資を行った際に所得税等が軽減される税制のことをいいます。
エンジェル税制の対象となる特定投資株式の売却により損失が生じた場合には、2つの特例を適用することが出来ます。
今回は、損失が生じた場合に受けられる2つの特例についてご紹介致します。
1.特定投資株式に係る譲渡損失の損益の計算の特例
払い込みにより取得した特定株式を譲渡したことにより譲渡損失が生じた個人投資家は、特定投資株式に係る譲渡損失の損益の計算の特例を適用することが出来ます。特定中小会社の特定株式を払込みにより取得をした居住者等が、その特定中小会社の設立の日からその特定中小会社が発行した株式に係る上場等の日の前日までの期間内に、その払込みにより取得をした特定株式の譲渡をしたことにより生じた損失の金額のうち、その譲渡をした日の属する年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない部分の金額がある場合には、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額を限度として、その年分の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することが出来ます。
なお、特定投資株式が株式としての価値を失った場合の特例により、特定株式の譲渡をしたことにより生じた損失の金額とみなされる金額についても、この特例の対象となります。
2.特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除の特例
払い込みにより取得した特定株式を譲渡したことにより譲渡損失が生じた個人投資家は、特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除の特例を適用することが出来ます。確定申告書を提出する居住者等が、その年の前年以前3年内の各年において生じた特定株式に係る譲渡損失の金額がある場合には、その確定申告書に係る年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る譲渡所得等の金額を限度として、その年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除することが出来ます。
つまり、特定投資株式に係る譲渡損失の損益の計算の特例を適用してもなお控除しきれない譲渡損失の金額は、その年の翌年以後3年間にわたり、一般株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る譲渡所得等の金額から繰越控除出来ます。
なお、同一年中に特定株式に係る譲渡損失の金額のほかに上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合の繰越控除は、特定株式に係る譲渡損失の金額を控除した後、上場株式等に係る譲渡損失の金額を控除します。
3.特例の適用方法
これらの特例の適用を受けるためには、この特例の適用を受けようとする旨の記載があり、一定の書類を添付した確定申告書を提出することが必要です。特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除の特例の適用にあたっては、その後において連続して一定の書類を添付した確定申告書を提出することが必要です。 一定の書類とは、下記に挙げる書類をいいます。
・都道府県知事の確認書又は認定投資事業有限責任組合が発行した確認書及び認定証の写し、若しくは認定少額電子募集取扱業者が発行した確認書及び認定証の写し
・発行会社が交付する一定の株主に該当しない旨の確認書
・株式投資契約書の写し
・株式異動状況明細書
・株式の譲渡等に関する書類
・特定権利行使株式及び特定投資株式分がある場合には、株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書
・特定投資株式に係る譲渡損失の計算及び繰越控除用の所得所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
4.まとめ
上記のように、エンジェル税制により譲渡損失が生じた個人投資家は所得税等を軽減する特例を適用することが出来ます。エンジェル税制の仕組みや確定申告の方法等、ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。