経営力向上計画の認定を受けた事業者は、計画実行のための支援措置を受けることが出来ます。
その支援措置のひとつに、税制措置として事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例の適用があります。
今回は事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例についてご紹介致します。
- 1.経営力向上計画とは
- 2.事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例とは
- 3.中小企業者等とは
- 4.適用期間
- 5.合併、会社分割又は事業譲渡
- 6.登録免許税、不動産取得税の軽減
- 7.事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例を受けるための手続き
- 8.まとめ
1.経営力向上計画とは
経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資等、自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることが出来ます。特定事業者が計画書を作成し国に提出し、国から認定を受ける仕組みです。作成の際に経営革新等支援機関である商工会議所や金融機関、士業の援助を受けることも出来ます。
特定事業者等とは、計画の認定を受けることが出来る事業者をさし、常時雇用する従業員数が2,000人以下の会社または個人事業主や、医業、歯科医業を主たる事業とする法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人に限られています。
また、経営力向上計画の認定により受けられる措置によって、その適用が受けることの出来る事業者の範囲が、更に定められています。 経営力向上計画を作成し提出することが出来る事業者と、各支援措置の適用を受けることが出来る事業者は一致がしないため、各支援措置の内容を確認することは非常に大切です。
今回ご紹介する事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例についても、経営力向上計画の作成提出が出来る全ての事業者が適用することが出来る措置では無いことに、留意が必要です。
2.事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例とは
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例とは、中小企業者等が、適用期間内に中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、合併、会社分割又は事業譲渡を通じて他の特定事業者等から不動産を含む事業用資産等を取得する場合、不動産の権利移転について生じる登録免許税、不動産取得税の軽減を受けることが出来る制度です。3.中小企業者等とは
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例における中小企業者等とは、下記の要件を満たす事業者のことをいいます。
1.資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
同一の大規模法人から1/2以上の出資を受ける法人、ふたつ以上の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人は、資本金又は出資金の額が1億円以下の法人であっ
ても、中小企業者等には該当をしません。
2.資本金又は出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
3.常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
4.協同組合等
4.適用期間
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例の適用を受けるためには、平成30年7月9日から令和6年3月31日までの期間に中小企業等経営強化法の認定を受ける必要があります。5.合併、会社分割又は事業譲渡
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例の適用を受けることが出来る会社の行為は、合併、会社分割又は事業譲渡により、後継者不在により事業の継続が困難となっている他の特定事業者等から土地や建物を含む事業上の権利義務を取得する行為であって、事業の承継を伴うものです。後継者不在により事業の継続が困難となっている、とは、後継者がいないため、そのままでは、長期にわたって安定的に事業を継続することが難しいことをさします。具体的には、被承継事業者の経営者が健康状態、年齢等の事由により、将来にわたり経営に十分な能力を維持することが困難と見込まれることを意味します。
認定時の審査基準としては、承継させる側の経営者の年齢が、認定申請時点において60歳以上であれば、それをもって要件を満たすものとして扱い、承継させる側の経営者の年齢が認定申請時点において60歳未満であれば、経営者の健康状態等の事由に基づき、将来にわたり経営に十分な能力を維持することが困難と見込まれることを書面により示し、合理的と認められる場合に要件を満たすものと扱われます。
6.登録免許税、不動産取得税の軽減
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例における軽減措置の内容は、下記のものになります。1.登録免許税
登録免許税とは、登記や登録等を受ける人が負担すべき税金で、不動産、船舶、航空機、会社、人の資格等についての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明について課税されます。事業承継には不動産所有権移転の登記が必要となる場合があり、この特例の適用により、下記のように軽減措置を受けることが出来ます。
・事業に必要な資産の譲受けによる移転の登記…通常税率が2.0%のところ、1.6%に軽減
・合併による移転の登記…通常税率が0.4%のところ、0.2%に軽減
・分割による移転の登記…通常税率が2.0%のところ、0.4%に軽減
2.不動産取得税
不動産所得税とは、取得した人が負担すべき税金で、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築等によって得た不動産について課税されます。事業承継には不動産取得税が必要となる場合があり、この特例の適用により、下記のように軽減措置を受けることが出来ます。
・土地、住宅…税額計算の根拠となる課税標準額から不動産の価格の1/6相当額を課税標準から控除、税額は課税標準額の3.0%
・住宅以外の家屋…税額計算の根拠となる課税標準額から不動産の価格の1/6相当額を課税標準から控除、税額は課税標準額の4.0%
7.事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例を受けるための手続き
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例の適用には、計画認定から申告手続きまで、手順を踏む必要があります。1.計画認定
合併、会社分割又は事業譲渡を行って土地、建物を取得することを内容に含む経営力向上計画を策定し、認定を受ける必要があります。登録免許税の軽減措置を受ける場合には、適用証明申請書を計画認定の省庁に2部提出し、軽減措置の対象であることを示す適用証明書を受け取る必要があります。
不動産取得税の軽減措置を受ける場合には、申請書の提出先は、当該措置に係る土地、建物が所在する都道府県です。
申請書の提出にあたっては、事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例の適用を受けたい旨を事前に省庁や都道府県に相談すると、適用の可否の判断を間違えることが無くなります。
2.合併等の実行、土地、建物の権利移転登記手続き
認定計画の内容に従って合併、会社分割又は事業譲渡を実行した後、土地、建物の権利移転に係る移転登記手続を法務局に申請します。登録免許税の軽減措置を受ける場合には、この申請の際、適用証明書を添付して申請することで、申請時に納付すべき登録免許税が軽減されます。
登録免許税の軽減措置を受けるためには、計画認定の日から1年以内に移転登記手続きを完了することが必要です。
3.不動産取得税の申告、納税
不動産取得税の軽減措置を受ける場合には、不動産の取得に係る申告の際に、認定書の写しを添付して申告をします。その後、都道府県から送付される納税通知書に従い、軽減された税額を支払います。8.まとめ
事業承継等に係る登録免許税、不動産取得税の特例を受けることで、税金の負担は非常に軽減されます。特例の適用にあたっては、その適用の可否の判断及び申請書の提出等が必要です。ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。