中小企業のM&Aを促進! 中小企業事業再編投資損失準備金の活用
税務・財務

中小企業が経営力向上計画の認定を受けると、中小企業事業再編投資損失準備金の活用により、М&Aを行う企業の税負担が繰り延べられる等のメリットがある税制措置を適用することが出来ます。
今回は、中小企業事業再編投資損失準備金についてご紹介致します。

この記事の目次

1.中小企業事業再編投資損失準備金とは

中小企業者が、適用期間内に事業承継等事前調査に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けた場合、当該計画に基づき株式等を取得し、かつ、これを事業年度末まで引き続き有している場合において、株式等の取得価額として計上する金額の一定割合の金額を準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額はその事業年度において損金算入することが出来ます。

積み立てた準備金は、帳簿価額の減損等の取崩要件に該当する行為を行った場合は、取り崩して益金に算入され、5年経過後は、その後の5年間にかけて均等額で準備金を取り崩し、益金に算入されます。

2.中小企業事業再編投資損失準備金の適用要件

上記の内容について、詳しく適用要件をご紹介致します。

1.中小企業者とは

中小企業事業再編投資損失準備金の適用の対象となる中小企業とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人や、資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人のことをいいます。

ただし、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人であっても、下記の事項に該当をする場合は、適用がされません。
・同一の大規模法人から1/2以上の出資を受ける法人
・2つ以上の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人
・前3事業年度の所得金額の平均額等が15億円を超える法人

2.適用期間とは

税制の適用を受けるために、事業承継等事前調査に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けるべき期間は、令和3年8月2日から令和6年3月31日までの期間のことをいいます。

3.事業承継等事前調査とは

税制の適用を受けるために認定を受ける経営力向上計画には、事業承継等事前調査に関する事項を記載する必要があります。

この調査は、M&Aによる譲受側が譲渡する側に対して行う調査です。法務、財務、税務その他の観点から、引き継ぐ経営資源について損害が生ずるおそれがないか調査を行うもので、一般的にデュー・デリジェンスと呼ばれるものです。

認定にあたっては、十分な事前調査を実施する予定かどうか、事業承継等事前調査チェックシートを元に確認を行います。

4.適用されるM&Aの行為

取得価額10億円以下の株式等の取得であって、事業の承継を伴うものについて、この税制は適用されます。

株式を取得した結果、他の事業者の発行済株式の総数、出資口数の総数又は出資価額の総額の50%以上に相当する数又は額の株式等を有する関係になるような他の特定事業者等の株式又は持分の取得のみが対象となり、事業譲渡、合併、株式交換等は対象となりません。

5.準備金として積み立てられることの出来る割合

株式の取得価額の70%を限度に、任意の金額を積み立てることが出来ます。取得価額とは、その購入の代価であり、購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額となります。

6.取り崩し要件

帳簿価額の減損等の取崩要件に該当する行為を行った場合は、取り崩して益金に算入されます。その要件とは、下記の事由が発生した場合をいいます。
・経営力向上計画の認定を取り消された場合
・取得した株式を、売却等を行うことで所有しなくなった場合
・株式を取得した法人が合併により合併法人に当該株式を移転した場合
・取得した株式を発行する法人が解散した場合
・取得した株式の帳簿価額を減額した場合
・株式を取得した法人が解散した場合
・株式を取得した法人が青色申告書の提出の承認を取り消され、又は取り止めた場合
・それ以外の場合において準備金を取り崩した場合

3.中小企業事業再編投資損失準備金の適用手続き

中小企業事業再編投資損失準備金を適用するための手続きは、下記の順に行います。

①計画認定

経営力向上の内容に株式取得を含み、かつ事業承継等事前調査の内容を記載した経営力向上計画を策定し、認定を受ける必要があります。 申請時には経営力向上計画の策定と併せて事業承継等事前調査チェックシートを作成し、添付します。

②株式取得の実行

認定計画の内容に従って株式取得を実行した後、事業承継等を実施したこと及び事業承継等事前調査の内容について報告し、確認書を受け取ります。

③税制措置の適用

税法上の要件を満たす場合には、税務申告において準備金積立額について損金算入をすることが出来ます。

税務申告に際しては、①の申請書の写し、認定書の写し、②の確認書の写しを添付します。

4.中小企業事業再編投資損失準備金を適用するメリット

中小企業事業再編投資損失準備金を適用することは、M&Aにおいて、下記のようなメリットがあります。

これらのメリットにより、中小企業事業再編投資損失準備金を適用することで、中小企業の非効率性が指摘されている社会で、中小企業のM&Aを促進し、中小企業の業務の集約による効率化、雇用機会の増加等をすることが出来るとされています。

1.企業の税負担が繰り延べられる

中小企業事業再編投資損失準備金を適用することで、株式の取得価額の70%を限度に、任意の金額を積み立てることが出来ます。 例えば1,000万円の株式を取得した際には、700万円の積立金を取得した年度に計上することが出来ます。つまり損失を700万円計上することが出来ることになります。

よって、取得した年度においては、700万円に対する法人税額の負担を減らすことが出来ます。
しかし取り崩し時には、この700万円は収益として計上されることになり、700万円に対する法人税額の負担が増加します。

よって、積立金の計上から取り崩し時までの期間を合計した法人税額の負担額は、適用前と適用後では変わりませんが、適用をすることで税金を支払うタイミングを遅くすることが出来る、繰延べが可能となります。

また、1年あたりの税負担も、700万円に対する法人税額を一時に支払う必要は無く、5年間に渡って収益を認識するため、全ての期間を合計した法人税の負担総額は700万円に対する法人税額で変わりは無いものの、1年あたりの負担額は140万円に対する法人税額のみとなり、年度毎の現預金の流出額を抑えることが出来ます。

2.リスクの少ないM&Aを実行することが出来る

中小企業事業再編投資損失準備金を適用するための経営力向上計画には、事業承継等事前調査に関する事項を記載する必要があります。

このことから、M&Aの内容について中小企業庁のチェックが入ることにより、M&A以後に帳簿には記載されていない対象企業の簿外資産負債や社会的な問題点等によるトラブルリスクを軽減することが出来ます。

5.まとめ

中小企業事業再編投資損失準備金は、M&Aを行う企業にとって、メリットのある税制です。手続きの負担のみで、法人税額の繰延等が出来るため、M&Aを予定する中小企業には、是非とも利用していただきたい制度のひとつです。

中小企業事業再編投資損失準備金の手続きや税額の計算においてご不明な点がございましたら、経営力向上計画の提出窓口である中小企業庁や、法人税申告書の提出窓口である税務署、若しくは身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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