中小企業要領における、有価証券、棚卸資産、経過勘定の会計処理
税務・財務

中小企業が利用することが出来る簡便的な中小企業の実態に即した会計ルールとして、中小会計要領があります。
今回は、中小会計要領において規定されている、有価証券、棚卸資産、経過勘定の会計処理についてご紹介致します。

この記事の目次

1.有価証券の原則的な会計処理

1.有価証券は、原則として、取得原価で計上する。


有価証券とは、株式や債券等の財産的価値のある証券のことをいいます。期末の有価証券は、原則として取得原価で計上を行い、取得原価とは購入金額に付随費用を加えた金額である取得価額を基礎として、適切に費用配分した後の金額のことをいいます。

2.売買目的の有価証券を保有する場合は、時価で計上する。


原則として有価証券は、取得原価で計上しますが、短期間の価格変動により利益を得る目的で相当程度の反復的な購入と売却が行われる、法人税法の規定にある売買目的有価証券は、時価で計上します。

3.有価証券の評価方法は、総平均法、移動平均法等による。


有価証券の期末評価は、一株あたりの期末金額に株数を乗じて計算を行います。この一株当たりの期末価額は、総平均法、移動平均法等を用いて算出を行います。

・総平均法とは、有価証券をその銘柄の異なるごとに区別し、その銘柄の同じものについて、その事業年度開始の時において有していたその有価証券の帳簿価額とその事業年度において取得をしたその有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもってその一単位当たりの帳簿価額とする方法です。
・移動平均法とは、有価証券をその銘柄の異なるごとに区別し、その銘柄を同じくする有価証券を取得する都度その有価証券のその取得の直前の帳簿価額とその取得をした有価証券の取得価額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その算出した平均単価をもってその一単位当たりの帳簿価額とする方法です。

4.時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。


取得原価で評価した有価証券については、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。回復の見込みがない場合には、評価損を計上することが必要となります。

時価が著しく下落したときとは、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合をいいます。有価証券の時価は、上場株式のように市場価格があるものについては容易に把握出来ますが、非上場株式については、一般的には把握することが難しいものと考えられます。

時価の把握が難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、大幅な債務超過等でほとんど価値がないと判断出来るものについては、評価損の計上が必要と考えられます。

2.棚卸資産の原則的な会計処理

1.棚卸資産は、原則として、取得原価で計上する。


棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料等のことをいいます。期末の棚卸資産は、有価証券と同様に、原則として取得原価で計上を行います。

2.棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法による。


棚卸資産の評価基準は、原価法又は低価法によるとされていますが、原価法とは、取得原価により期末棚卸資産を評価する方法で、低価法とは、期末における時価が取得原価よりも下落した場合に、時価によって評価する方法です。

3.棚卸資産の評価方法は、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法等による。


棚卸資産の評価方法は、上記のように様々な方法があり、業種や規模によって適切な方法を採用するようにします。

・個別法とは、個々の棚卸資産の金額が取得から販売までの過程において明確に分かる場合のみに採用される評価方法です。
・先入先出法とは、棚卸資産を種類、品質及び型の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、最も古いものから順次販売されたものとみなし、その取得価額により評価する方法です。
・総平均法とは、棚卸資産をその種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、期首において有していた棚卸資産の取得価額の総額と期中に取得した棚卸資産の取得価額の総額との合計額を、その棚卸資産の総量で除して得た価額を1単位当たりの評価額とする方法です。
・移動平均法とは、棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、棚卸資産を取得するつど、1単位当たりの取得価額を、その取得の時に有する棚卸資産の数量及び取得価額とその取得した棚卸資産の数量及び取得価額とにより改定する方法です。
・最終仕入原価法とは、棚卸資産を種類等の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、期末から最も近い時において取得したものの取得価額をその1単位当たりの取得価額として評価する方法です。
・売価還元法とは、棚卸資産を種類等又は通常の差益の率の異なるごとに区別し、その種類等又は通常の差益の率の同じものについて、期末における種類等又は通常の差益の率を同じくする棚卸資産の通常の販売価額の総額に原価の率を乗じて計算した金額を取得価額として評価する方法です。

4.時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上する。


原価法により評価した場合であっても、時価が取得原価よりも著しく下落したときは、回復の見込みがあるかないかを判断します。回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上することが必要となります。

棚卸資産の時価は、商品、製品等については、個々の商品等ごとの売価か最近の仕入金額により把握することが考えられます。時価を把握することが難しい場合には、時価が取得原価よりも著しく下落しているかどうかの判断が困難になると考えられますが、例えば、棚卸資産が著しく陳腐化したときや、災害により著しく損傷したとき、あるいは、賞味期限切れや雨ざらし等でほとんど価値がないと判断出来るものについては、評価損の計上が必要と考えられます。

3.経過勘定の原則的な会計処理

1.前払費用及び前受収益は、当期の損益計算に含めない。


経過勘定は、サービスの提供の期間とそれに対する代金の授受の時点が異なる場合に、その差異を処理する勘定科目です。損益計算書に計上される費用と収益は、現金の受払額ではなく、その発生した期間に正しく割当てる必要があるためです。
なお、金額的に重要性の乏しいものについては、受け取った又は支払った期の収益又は費用として処理することも認められます。

・前払費用と前受収益は、翌期以降においてサービスの提供を受けた、もしくは提供した時点で費用又は収益となるため、当期の損益計算には含めないことになります。
・前払費用とは、決算期末においていまだ提供を受けていないサービスに対して支払った対価であり、前払いの支払家賃や支払保険料、支払利息等が該当をします。
・前受収益とは、決算期末においていまだ提供していないサービスに対して受け取った対価であり、前受けの家賃収入や受取利息等が該当をします。

2.未払費用及び未収収益は、当期の損益計算に反映する。


未払費用と未収収益は、当期において既にサービスの提供を受けている、もしくは提供しているので、当期の損益計算に反映することになります。

・未払費用とは、既に提供を受けたサービスに対して、決算期末においていまだその対価を支払っていないものであり、後払いの支払家賃や支払利息、従業員給料等が該当をします。
・未収収益とは、既に提供したサービスに対して、決算期末においていまだその対価を受け取っていないものであり、後払いの家賃収入や受取利息等が該当をします。

4.まとめ

有価証券、棚卸資産、経過勘定の中小会計要領における処理方法についてご紹介致しました。会計処理方法について複数の処理方法が認められているものにつては、企業にとって好ましいものを採用することが出来ますが、一度採用をした方法は、年度毎に変更をせずに採用し続けるようにしましょう。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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『中小企業要領における、金銭債権及び金銭債務、貸倒損失及び貸倒引当金の会計処理』

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