取得日によって違う!減価償却資産の償却方法の選択
税務・財務

減価償却資産の償却方法は、法人は任意で複数の中から選択することが出来ますが、資産の取得日や種類によって、選択することが出来る償却方法が定められています。 今回は、それぞれ選択することが出来る償却方法についてご紹介致します。

この記事の目次

1.減価償却資産と償却方法の選択

1.減価償却資産とは

減価償却資産とは、時の経過等によって価値の下がる事業に用いられる資産のことであり、建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具等があります。
土地や骨とう品等のように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産に該当をしません。
減価償却資産を法人が取得した場合、その価値の下落部分を費用として認識をする必要があります。この認識を数値化させることを減価償却といい、耐用年数に渡って行われます。

2.減価償却資産の償却方法

減価償却資産の償却方法は、原則である法定償却方法と、届け出を行うことで選択することの出来る方法とに分かれ、届け出を行わない限りは法定償却方法を選択することとなります。
この選択は資産の種類毎に選択をし、機械装置等については設備の種類毎に選択をします。よって、2つの事業所にそれぞれ機械を所有する場合は、事業所毎に減価償却方法を定めることが出来ますが、1つの事業所内の機械は同一の減価償却方法を選択する必要があります。

2.平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産

1.建物(鉱業用減価償却資産を除く)
・平成10年3月31日以前に取得…法定償却方法は旧定額法、届け出を行う場合は旧定額法、旧定率法
・平成10年4月1日以後に取得…法定償却方法の旧定額法のみ

2.有形減価償却資産(建物、鉱業用減価償却資産、国外リース資産を除く)
法定償却方法は旧定率法、届け出を行う場合は旧定額法、旧定率法

3.鉱業用減価償却資産(鉱業権、国外リース資産を除く)
法定償却方法は旧生産高比率法、届け出を行う場合は旧定額法、旧定率法、旧生産高比例法

4.無形減価償却資産、生物(鉱業権を除く)
法定償却方法の旧定額法のみ

5.鉱業権
法定償却方法は旧生産高比例法、届け出を行う場合は旧定額法、旧生産高比例法

6.国外リース資産
法定償却方法の旧国外リース期間定額法のみ

3.平成19年4月1日から平成28年3月31日までに取得した減価償却資産

1.建物(鉱業用減価償却資産、リース資産を除く)
法定償却方法の定額法のみ

2.有形減価償却資産(建物、鉱業用減価償却資産、リース資産を除く)
・平成24年3月31日以前に取得…法定償却方法は250%定率法、届け出を行う場合は定額法、250%定率法
・平成24 年4月1日以後に取得…法定償却方法は200%定率法、届け出を行う場合は定額法、200%定率法

3.鉱業用減価償却資産(鉱業権、リース資産を除く)
・平成24年3月31日以前に取得…法定償却方法は生産高比例法、届け出を行う場合は定額法、250%定率法、生産高比例法
・平成24年4月1日以後に取得…法定償却方法は生産高比例法、届け出を行う場合は定額法、200%定率法、生産高比例法

4.無形減価償却資産、生物(鉱業権、リース資産を除く)
法定償却方法の定額法のみ

5.鉱業権
法定償却方法は生産高比例法、届け出を行う場合は定額法、生産高比例法

6.リース資産
法定償却方法のリース期間定額法のみ

4.平成28年4月1日以後に取得した減価償却資産

1.有形固定資産(鉱業用減価償却資産、リース資産を除く)
・建物、建物附属設備、構築物…法定償却方法の定額法のみ
・その他の有形減価償却資産…法定償却方法は200%定率法、届け出を行う場合は定額法、200%定率法

2.鉱業用減価償却資産(リース資産を除く)
・建物、建物附属設備、構築物、鉱業権…法定償却方法は生産高比例法、届け出を行う場合は定額法、生産高比例法
・その他の鉱業用減価償却資産…法定償却方法は生産高比例法、届け出を行う場合は定額法、200%定率法、生産高比例法

3.無形減価償却資産、生物(鉱業権、リース資産を除く)
法定償却方法の定額法のみ

4.リース資産
法定償却方法の定額法のみ

5.定額法と定率法の違い

多くの法人が採用すべき減価償却資産の償却方法は定額法と定率法です。定額法と定率法では、耐用年数が終了した以後に残る簿価は同額ですが、それまでの期間において計上される1事業年度あたりの減価償却費が異なります。

1.定額法

定額法とは、償却費の額が原則として毎年同額となり、取得価額に定額法の償却率を乗じて計算を行います。
定額法では、旧定額法と定額法があります。平成19年度税制改正により、平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産の償却費の計算方法については、償却可能限度額および残存価額が廃止され、1円まで償却することとされました。これにより旧定額法と旧定率法では償却率が異なります。

2.定率法

一方で定率法とは、償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少します。ただし、定率法の償却率により計算した償却額が償却保証額に満たなくなった年分以後は、毎年同額となります。未償却残高に定率法の償却率を乗じて計算を行い、この金額が償却保証額に満たなくなった年分以後は改定取得価額に改定償却率を乗じて計算を行います。

定率法では、旧定率法、定率法、250%定率法、200%定率法があります。旧定率法と定率法では、定額法と同様に平成19年度の税制改正に起因をし、償却率が異なります。250%定率法と200%では、平成23年12月税制改正により、平成24年4月1日以後に取得する減価償却資産について定率法の償却率等が改正され、こちらも償却率が異なります。

6.減価償却資産の償却方法の届出

償却方法が複数認められている減価償却資産について、法定償却方法から変更をするためには、減価償却資産の償却方法の届出を提出する必要があります。 納税地の所轄税務署長に下記に定める期限までに持参又は送付を行います。手数料は不要です。

1.普通法人を設立した場合
設立第1期の確定申告書の提出期限までに届け出を行います。

2.公益法人等及び人格のない社団等が新たに収益事業を開始した場合
新たに収益事業を開始した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出を行います。

3.設立後既に償却方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した場合
その減価償却資産の取得をした日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出を行います。

4.新たに事業所を設けた法人で、その事業所に属する減価償却資産につき、その減価償却資産と同一区分の減価償却資産について既に採用している償却方法と異なる償却方法を選定しようとする場合、既に事業所毎に異なった償却方法を採用している場合

5.新たに事業所を設けた日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出を行います。
新たに船舶を取得した法人で、当該船舶につき当該船舶以外の船舶について既に選定している償却の方法と異なる償却の方法を選定しようとするもの、既に船舶毎に異なる償却の方法を選定している場合
新たに船舶を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届け出を行います。

7.まとめ

このように、減価償却資産の償却方法は複数あり、資産の取得日や種類によって適用をすることが出来る償却方法が異なります。そして届出を行わない限り、法定償却方法が採用されます。

一度採用をした減価償却資産の償却方法は、毎期継続して適用することが望ましいです。過度な会計方針の変更は、財務諸表に対する利害関係者の理解を妨げることになるため、推奨されません。法定償却方法から変更をする場合は、その変更理由を明示出来るよう、十分な検討が必要です。
減価償却の方法等、ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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