納税者に知っていてほしい ! 税務調査の「推計課税」について税理士が徹底解説
税務・財務


この記事の目次

推計課税とは


税務調査を受けていると、困った状況になることがあります。調査官に質問されたので、 回答しようと思い、明細などの資料を探してみると、その資料が無いような場合です。
何も悪気があって資料を捨てたわけではないにせよ、資料などがなければ答えようもないわけですし、これでは税務調査自体も進まないわけです。

さて、このように資料などがないケースでは、税務調査はどうなるのか、ということが問題になります。こういうケースに備えて、法律では「推計課税」という制度があります。 推計課税とは、資料などがない場合に、何か特定の金額・割合から、まさしく推計で税額を算出する方法のことです。

では、そもそも推計課税とは、どのような制度なのでしょうか ?

■ 推計課税とは
・悪意があって資料等を破棄した者にも課税できるようにするため
・悪意はないにしろ、資料等がない場合に正しい税額を算出するために設けられている制度

しかし、税務調査の現場では、調査官が無理でも推計課税を使って課税しようとするケースがあるので注意が必要です。


調査官が無理でも推計課税を使って課税しようとするケース


たとえば、飲食店を3店舗営む会社で考えてみましょう。飲食店の場合、業種が異ならない限り、店舗ごとの粗利率(粗利益÷売上)が大きく異なることはありません。

しかし現実には、顧客層が違う、割引券を発行しているなど、店舗ごとの粗利率がかい離することもあるわけです。調査官は「店舗ごとの粗利率が大きく異なることはない」という点に着目し、「なぜこれほど店舗ごとに粗利率が違うのですか?」「粗利率が低い店舗で売上を除外しているのではないですか?」「原価を水増ししているのではないですか?」と疑ってくるわけです。しかしこの指摘に、調査官も何か決定的な証拠があるわけではなく、あくまでも数字と理論上から疑っているにすぎません。

このようなケースで、調査官が「粗利率が店舗ごとにこれほど違うのはおかしい!適正な粗利率を算出して、全店舗それに合わせてください」などと、推計課税を強要してくることもあるのです。


推計課税が適用される3つの要件とは


推計課税はどんな場合でも適用できるものではなく、要件が3つあります。すべての要件が揃っていなければ、推計課税はできないのです。

(1)内国法人(居住者)が対象であること
(2)更正(決定)する場合にだけできる
(3)青色申告者にはできない

ですから、青色申告をしている会社が、調査官の指摘に従って、推計課税を根拠とした修正申告を提出する必要などないのです。この要件はぜひ知っておいてもらいたいものです。


「〇〇%削ります」といわれたら…


税務調査で多い指摘が、「交際費が同業他社と比べて多額なので、半分にします。」「交際費に私的な支出が入っているので、30%削ります。」といったものです。

本来税務調査とは、「この支出は社長個人の支出ですから、経費(損金)になりません。」 など、個別に「これはいい」「これはダメ」と言われるものです。

しかし、個別に指摘するのが面倒なのか、調査官はよく「〇〇%は経費になりません。」 と指摘してくるものです。
さて、この「〇〇%は経費になりません。」は正しいのでしょうか。 結論を先に書いておくと、適当な割合で否認することは、法律上何の根拠もありませんから、もし調査官にこのような否認指摘を受けても、受け入れる必要はまったくありません。

もちろん、このような指摘割合に根拠があるとか、もしくは受け入れた方が得などといった場合は別なのですが・・・ 個別に「これはダメ」などと否認することを「実額課税」といい、一方「〇〇%は経費になりません。」などと否認することを「推計課税」と呼んでいます。

■ 法人税法第131条(推計による更正又は決定)
税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準を推計して、これをすることができる。


調査官の「〇〇%は経費になりません」は受け入れなくていい



まとめ


法律では推計課税を認めていますが、これが認められているのは、「帳簿書類がない」、「税務調査を拒否する」など、実額による課税ができない場合に、推計課税する必要があるからなのです。

つまり、推計課税は税務署がいつでもできるものではなく、実額課税ができない場合の措置といえるのです。ですから、税務調査を受け入れ、帳簿書類等を提示しているにもかかわらず、推計課税で否認指摘してくる調査官の主張を、受け入れる必要などまったくないのです。この点はぜひ知っておいていただきたいポイントです。

税務調査についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

参照 : SHARES 田中雅明税理士事務所 田中雅明のページ


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