法人成をする5つの税務上のメリット
税務・財務

法人成とは、個人事業者が会社を設立して、その会社に事業を移すことをいいます。法人成にあたっては、会社を設立するための登記諸費用や、法人運営の事務管理費用、社会保険料の負担等が発生をしますが、個人事業者よりも会社の方が社会的な信用を得やすい等のメリットがあります。
今回は法人成をするメリットのうち、税務上のメリットを5つご紹介致します。

この記事の目次

1.メリット①所得税と法人税の税率の違いからの節税

個人事業者の所得には所得税が課税され、法人の所得には法人税が課税されます。同じ事業の利益であっても、個人事業者と法人では、その利益に課される税金の種類が異なります。 税金の種類が異なることで、その税金の算出方法も異なり、所得税は超過累進税率が適用され、法人税は比例税率が適用されます。
この税金の算出方法が異なることから、事業の利益によっては、その利益に課される税額が、所得税よりも法人税の方が少なくなり、納付すべき税金が低くなるメリットがあります。 所得税の税率は超過累進税率が適用され、所得に応じて異なり、5%から45%と段階的に定められています。

一方で法人税の税率は比例税率が適用され、その法人が中小企業である場合には、年800万円までの所得に対しては15%、年800万円を超える所得に対しては23.20%が課税されます。 よって、所得税の税率が5%を適用される、所得が195万円以下となる利益が見込まれる場合には、法人税率の15%の適用と比較をすると、所得税の方が税率は低いため、個人事業者が納付すべき税額においては有利といえますが、所得税の税率が45%を適用される、所得が4,000万円超となる利益が見込まれる場合には、法人税率の23.20%の適用と比較をすると、法人税の方が税率は低いため、法人が納付すべき税額においては有利といえます。
個人事業者が法人成を所得金額から検討する際には、所得税の税率は所得が330万円以上になると20%となり、法人税の税率15%を上回るため、所得が330万円を超すことが見込まれる場合においては、法人成をすることが有効であるといえます。

2.メリット②所得の種類が変更されることでの節税

個人事業者の代表者の手元に残る金額は、事業所得に分類がされます。この金額は事業収入から事業経費を差し引いた利益のお金であり、手元に残るといえど、生活費に充てるだけでなく、次年度の事業の運転資金にもなります。
一方で法人の代表者の手元に残る金額は、法人から支払われる役員報酬となるため、給与所得に分類がされます。この金額は事業経費の一部であり、法人の利益とは異なります。給与であることから生活費に充てることが出来、次年度の事業の運転資金は、代表者の手元のお金とは別の、法人がもつ現預金から支出することになります。

手元に残る金額が同額である場合においては、事業所得よりも給与所得の方が、給与所得には給与所得控除が適用することが出来るため、給与所得控除額分に相当をする代表者が支払うべき所得税が、減額されるメリットがあります。

3.メリット③経営者の親族に対する給与を費用化することでの節税

個人事業者と法人では、経費として認められる親族に対する給与についての取り扱いが異なり、法人の方が制限は少なく、経費を多く計上することが出来、所得を少なくすることが出来るというメリットがあります。
個人事業者が青色申告である場合、青色申告専従者給与に該当をしなくては、親族に対する給与が経費として認められません。青色申告専従者給与に該当をする給与とは、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であり、その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であり、かつその年を通じて6ヶ月を超える期間をその青色申告者の営む事業に専ら従事している人に対して支払われる給与です。

一方で法人の場合では、勤務実態に応じて適正に支出を行った給与については、その給与は全額経費として認められます。
例えば、本業は別の会社に勤務をしているが、月に1回、定期的に個人事業者の経理の手伝いをしている妻に対する給与を支払っても、事業に専ら従事しているとはいえないため個人事業者では経費として認められませんが、法人が妻に日給1万円等の適正な価格で給与を支払う場合には、法人では経費として認められます。

4.メリット④青色欠損金の繰越控除期間の違いによる節税

青色欠損金とは、青色申告を行う者が、過年度の累積赤字を次年度以降の黒字が発生した時点で税金の計算上で過去に発生して繰り越していた損失を相殺することです。
例えば事業の利益が、創業1年目はマイナス100万円、2年目もマイナス100万円、3年目になってプラス500万円であった場合に、1年目、2年目は利益に対する税金は0円、3年目は利益500万円に対する税金ではなく、それまでのマイナスと相殺をさせた200万円に対する税金のみ支払えばよい、という仕組みです。

このマイナスを繰り越すことの出来る期間が、個人事業者と法人では異なり、個人事業者は3年、法人は10年です。法人の方が長い期間、損失を繰り越せることが出来るというメリットがあります。
例えば創業11年目に初めて黒字となった場合には、個人事業者では、8、9、10年目の赤字分しか相殺をすることが出来ませんが、法人では1~10年間において発生した赤字を相殺することが出来、11年目に納めるべき税金を少なくすることが出来ます。

5.メリット⑤減価償却費の計上額の違いによる節税

減価償却費とは、事業で使用をする建物や備品等の減価償却資産を保有する場合に、その取得価格を耐用年数で按分をして費用化した、その費用のことをいいます。 個人事業者では、毎年その減価償却費の計上は強制ですが、法人では減価償却費の計上額の上限は定められているものの、その範囲内の金額で任意の額を計上することが出来ます。0円で計上をすることも可能です。

このように、減価償却費の計上額によって、法人ではその期の利益を恣意的に変えることが出来るというメリットがあります。
上記4でご紹介したように、青色欠損金の繰越期間は、個人では3年間です。個人事業者の創業1年目のマイナスである利益金額は、4年目のプラスの利益とは相殺することが出来ません。つまり利益がマイナスであろうとも強制的に計上がされた1年目の減価償却費は、有効的に税額を減少されるための経費として4年間の間に活用されなくなってしまいます。
一方で法人の場合は任意で減価償却費の計上額を決定することが出来ることから、利益がマイナスの年度は減価償却費を0円とし計上せず、利益がプラスの年度には減価償却費を計上するという、減価償却費の経費としての有効活用をすることが出来ます。

6.まとめ

上記のように、個人事業者の事業が一定の規模以上になると、税務上では法人成をした方がメリットは大きくなります。
しかし、法人成をすることはメリットばかりではありません。設立のための費用、法人税の決算や申告業務をするための事務コストの発生等、金銭面においては税金以外の部分も検討比較が必要です。
また、金銭面のみならず、法人格を得ることで社会的な信用を得る反面、会社法や商法を学び遵守していくことも大切です。 個人事業者が法人成を検討し始めるということは、事業が軌道にのり、拡大をしていくことが予見され始めた状況です。その勢いを無くさぬように、多角的な面から法人成は慎重に判断を行うようにしましょう。
法人成についてご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。

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