近年、副業OKの企業が増加しており、副業をしている会社員の方も増えてきました。会社員が副業で得た収益は「事業所得」または「雑所得」として確定申告することが多いですが、事業所得と雑所得とでは、申告した人の税負担に大きな違いがあります。本記事では、有利な確定申告が行えるよう、これら2つの所得の違いを解説します。
1.事業所得と雑所得の違い
所得の種類は、全部で10種類あります。所得の種類
①利子所得(例:公社債の利子)②配当所得(例:株式の配当)
③不動産所得(例:賃貸不動産から得た収入)
④給与所得(例:会社から受け取る給与・賞与)
⑤退職所得(例:退職金)
⑥山林所得(例:立ち木を販売して得た収入)
⑦譲渡所得(例:土地や建物などを売却して得た収入)
⑧一時所得(例:満期保険金)
⑨事業所得
⑩雑所得
事業所得とは、①~⑧の所得に該当しない、サービス業・建設業・卸売業・小売業などの事業から発生する所得のうち、次の条件に当てはまる所得のことをいいます。
事業所得に該当するための条件
1.継続して安定的な収入を得ていること2.本業と同等の労力・時間をかけていること
3.自己の判断により、リスクを負って業務を遂行していること
4.社会通念上、職業として認知されていること
そして、上記のどの所得にも該当しない所得を、雑所得といいます。
事業所得のメリット
税負担の軽減という観点では、雑所得よりも事業所得として確定申告できる方が有利です。なぜかというと、事業所得には、いくつかの節税効果のある制度の利用が認められているからです。主な制度は次の通りです。
1.他の所得との損益通算できる
副業で赤字が発生してしまったとき、給与所得などの他の所得と相殺して、税負担を軽減することができます。
2.青色申告制度が利用できる
事業所得では、節税効果が高い「青色申告制度」の利用が認められています。
青色申告制度の主なメリット
・「青色申告特別控除」10万円・55万円・65万円のいずれかを所得から控除できる
・「青色事業専従者給与」事業に専従する親族等に支払った給与を経費計上できる
・「純損失の繰越し・繰戻し」赤字を最大3年間損失繰越、または還付できる
・「少額特例の適用」30万円未満の設備投資は一括で経費計上できる
・「貸倒引当金の計上」売掛金のうち一定割合を引当金として経費計上できる
これらの制度を活用できれば、雑所得と比較して税負担が大幅に軽減され、事業運営を有利に進めることができるでしょう。
3.事業所得として申告するためには?
事業所得かどうかは、社会通念上事業所得と言える所得であることを前提として、主に帳簿書類の記帳と保存ができているか否かによって判定されます。・帳簿書類の記帳と保存を行っている場合
→収入金額にかかわらず、おおむね事業所得。
ただし、下記に該当する場合は、帳簿の記帳・保存を行っていても雑所得となるため注意が必要です。
例外①おおむね3年に渡って年収300万円以下かつ本業の収入に対する売上割合が10%未満の場合
例外②おおむね3年に渡って赤字で、かつ、赤字解消のための取組を実施していない場合
・帳簿書類の記帳と保存を行っていない場合
→副業収入が年収300万円以下の場合は、すべて雑所得。
副業収入が年収300万円超の場合は、証拠がある場合を除いてすべて雑所得。