節税対策のひとつに、課税される所得を減らす効果のある所得控除の額を増やすという方法があります。所得控除は15種類ありますが、この中で個人が額を増やしやすいものが、小規模企業共済等掛金控除と寄附金控除です。
今回は、この2つの活用による節税対策について、ご紹介致します。
この記事の目次
1.所得控除とは
所得控除とは、所得税額を計算する際に各納税者の個人的事情を加味しようとするものであり、それぞれの所得控除の要件に当てはまる場合には、各種所得の金額の合計額から各種所得控除の額の合計額を差し引きます。所得控除の種類は、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除の15種類です。
2.小規模企業共済等掛金控除
1.小規模企業共済等掛金控除とは
小規模企業共済等掛金控除とは、納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に、その支払った金額について受けられる所得控除です。2.小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金
小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金は、下記の3つが該当をし、その年に支払った掛金の全額が控除の対象となります。・小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金個人事業
・地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
3.小規模企業共済等掛金控除の適用
主が小規模企業共済等掛金控除を適用する場合は、確定申告が必要です。確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入するほか、支払った掛金の証明書または、電磁的記録印刷書面を確定申告書に添付または提示する必要があります。3.小規模企業共済が個人で活用しやすい理由
小規模企業共済等掛金控除の対象となる掛金のうち、小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金は、非常に個人事業主が活用しやすいものです。独立行政法人中小企業基盤整備機構の小規模共済を活用するメリットについてご紹介致します。
1.少額の掛金から利用が出来る
掛金を自身で選択することが出来る点においては、生命保険料控除や地震保険料控除の適用対象となる医療保険料や火災保険料等と同じですが、医療保険料や火災保険料よりも掛金が少額であり、月々の掛金は1,000円から70,000円まで500円単位で自由に設定が可能です。また、小規模共済に加入後も増額や減額出来る点も、医療保険料や火災保険料と比較をすると自由度が高く活用しやすいといえます。
2.掛金の全額を所得控除にすることが出来る
生命保険料控除や地震保険料控除は、年間の支払った生命保険料が20,000円を超える場合や地震保険料が50,000円を超える場合には、支払った全額を所得控除にすることが出来ず、計算によって求めた支払った金額よりも少ない金額が所得控除として適用がされます。一方で、小規模共済の掛金は全額が所得控除として適用することが出来ることから、最大で年間840,000円の掛金が所得控除に適用出来、節税効果が高いといえます。
3.退職金の準備をすることが出来る
小規模共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主等のための、積み立てによる退職金制度です。廃業をした場合や65歳以上になった場合等の一定の事由に該当をすると、共済金を受け取ることが出来、掛金の総額よりも多くの金額を受け取ることが出来ます。
普通預金に同様の金額を預けるよりも、多くの運用益が見込めるため、節税だけではない利用価値があるといえます。
4.寄附金控除
1.寄附金控除とは
寄附金控除とは、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、特定寄附金を支出した場合には、受けられる所得控除です。2.特定寄附金に該当をする寄附金
寄附行為に用いた金銭の全てではなく、下記に該当をするものが、寄附金控除の適用対象となります。・国、地方公共団体に対する寄附金
・公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち、一定の要件を満たすと認められるものとして、財務大臣が指定したもの ・所得税法別表第一に掲げる法人その他特別の法律により設立された法人のうち、教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして、所得税法施行令第217条で定めるものに対する当該法人の主たる目的である業務に関連する寄附金
・特定公益信託のうち、その目的が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する一定のものの信託財産とするために支出した金銭
・政治活動に関する寄附金のうち、一定のもの
・認定特定非営利法人等に対する寄附金のうち、一定のもの
・特定新規中小会社により発行される特定新規株式を払込みにより取得した場合の特定新規株式の取得に要した金額のうち一定の金額
3.寄附金控除の適用
個人事業主が寄附金控除を適用する場合は、確定申告が必要です。寄附金控除に関する事項を記載した書類を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出する際に提示する必要があります。5.寄附金控除が個人で活用しやすい理由
寄附金控除の対象となる寄附金のうち、地方公共団体に対する寄附金であるふるさと納税は、非常に個人事業主が活用しやすいものです。ふるさと納税を活用するメリットについてご紹介致します。
1.自由な金額とタイミングで寄附を行うことが出来る
ふるさと納税は、各地方公共団体が募集を行っており、その金額は様々です。また寄附の募集は1年を通じて行っています。寄附金の所得控除の適用は、その寄附を行った年に所属することから、その年の所得が確定をする12月末頃になってからでも、節税したい金額に合わせて即日寄附を行うことが出来る点が、自由度が高く活用しやすいといえます。
2.返礼品を受け取ることが出来る
ふるさと納税は、各地方公共団体に寄附を行うことに対して、返礼品を受け取ることが出来ます。ふるさと納税で所得控除の対象となる金額は、寄附金額から2,000円を差し引いた金額であることから、返礼品を2,000円で購入したことと同意となります。節税をしながら、多種多様な返礼品から好きなものを選べることが、他の寄附金よりも魅力があるといえます。
3.寄附金の使い道を選べる
寄附先の地方公共団体が選べることにより、自身にゆかりのある土地のみならず、復興を応援したい地域や、政策を指示したい地域に寄附をすることが出来ます。更にどのような使い方をして欲しいかを選択することが出来、公共事業に充てて欲しい、教育に充てて欲しい、等の希望を間接的に伝えることが出来ます。
寄附行為によって意思を伝えやすい点が、他の寄附金よりもその寄付行為が有意義に感じられるといえます。
6.まとめ
個人が取り組みやすい節税対策として、小規模企業共済等掛金控除と寄附金控除をご紹介致しました。いずれも支払った年の所得控除の対象となるため、その年の所得の概算が予測出来る11月や12月になってでも間に合う対策である点が魅力です。個人の確定申告や節税対策について、ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。
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