個人が事業により収入を得るにあたり、タックスプランニングを考える際には、課税主体を選択することが必要です。課税主体を選択することとは、法人成をして収入を得るのか、個人事業主として収入を得るのか、ということです。
それでは法人の収入から発生する法人税、個人の収入から発生する所得税では、何が違うのでしょうか。今回は、この2つの税金の違いについてご紹介致します。
1.法人税とは
法人税は、法人の所得に対して課せられる国税であり、税金を納める者と負担する者とが同一である直接税です。また、法人が自ら所得金額及び税額を計算する、申告納税方式の税金です。
2.所得税とは
所得税は、個人の所得に対して課せられる国税であり、税金を納める者と負担する者とが同一である直接税です。また、法人税と同様に、個人が自ら所得金額及び税額を計算する、申告納税方式の税金です。
3.法人税と所得税の違い
法人税と所得税は、上記のように国税でありかつ直接税、かつ申告納税方式の税金であることは同じですが、税制上の観点から主に下記の点で異なっています。1.単位課税の違い
法人税と所得税とでは、税額の計算根拠となる課税対象となる所得が発生する期間の区切りが異なります。法人税は事業年度単位課税であり、定款により法人が定めた営業年度を一会計年度とします。この営業年度は一年を超えることは出来ません。
例えば、営業年度を4月から3月と定款で定めた場合には、この4月から3月を一会計年度とし、5月31日が申告及び納税の期限となります。
一方で所得税は歴年単位課税であり、1月から12月を一会計年度とします。営業年度の選択の余地が無く、翌年3月15日が申告及び納税の期限となります。
2.税率の違い
法人税と所得税とでは、所得に対して乗じられる税率が異なり、所得に応じて法人の方が有利か、個人事業主の方が有利かの判断が変わります。法人税は比例税率であり、中小法人に対する特例を除き、原則として所得の大小に関わらず、税率が一定、つまり所得に対する負担する税金の割合はどの法人も一緒です。
一方で所得税は超過累進税率であり、所得が大きい人ほど税率は高く、つまり高所得者ほど負担する税金の割合が大きいです。
3.欠損金の繰越年度
法人税と所得税とでは、課税所得を計算する際に黒字と相殺を出来る赤字、つまり欠損金を繰り越しすることが出来る年度が異なります。 法人税は平成30年4月1日以後に開始する事業年度で生じた欠損金額については、10年繰り越しを行うことが出来ます。
一方で所得税は3年繰り越しを行うことが出来ます。
4.減価償却費の計上
法人税と所得税とでは、課税所得を計算する際に所得を減額する経費として認識することが出来る減価償却費の計上方法が異なります。 法人税は減価償却が任意償却であり、減価償却費を計上せずとも赤字が決定している事業年度においては、減価償却費を計上せずに申告を行うことが認められています。 一方で所得税は減価償却が強制償却であり、減価償却費を計上せずとも赤字が決定している事業年度においても、減価償却費を計上する必要があります。4.まとめ
法人税と所得税について、税制上の観点からの違いをご紹介致しました。法人成をして収入を得るのか、個人事業主として収入を得るのか、課税主体の判断に迷った際には、ぜひ参考にしてください。また、課税主体の判断は、ご紹介しました税制上の観点のみならず、取引先の数や売上高、従業員の多寡等の事業規模や、課税主体の違いによる社会的責任や信用等、様々な側面からメリット、デメリットを踏まえて行うことが必要です。
ご不明な点がございましたら、身近な専門家に相談されることをお勧め致します。