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皆様こんにちは、個人の素肌感覚は別として、景気は確実によく、失業率も3%を下回り、限界に近づいていると言われております。大卒はもちろん、高卒の就職内定率も100%と伝えられており、企業においては人材採用に工夫が必要な時代になっていると思います。同業他社に比べて、明らかに高水準である処遇、給料を高くすることは、どんな企業でも簡単ではありません。従って、そうした給与水準以外の部分で、アピールすることが多くなってきています。
私は、源泉所得税の専門家であり、長く東京国税局で源泉所得税の法令審理に携わってきました。この立場から企業の人材採用においての思わぬ注意点を解説したいと思います。
福利厚生の拡充
福利厚生の拡充は、人材獲得競争を勝ち抜くために不可欠な時代になっており、福利厚生制度は、簡単に言えば、給料を金銭で支払うものではないけれども、経済的な利益を従業員に与えるものです。
一般的には、社宅や寮の貸与、郊外の工場などの場合に食堂などを設けることによる昼食代の補助、慰安旅行などの費用の補助、従業員の疾病などがカバーされる生命保険への加入、社内販売による製品や商品の値引き販売、技術などを習得するための費用の負担、スポーツクラブなどの利用補助、様々なものがあります。比較的新しいものでは、ストックオプションなどの株式を使ったインセンティブについても、従業員に経済的な利益を給付するものですね。
福利厚生を拡充した結果税務調査になる可能性がある
これらについては、金銭で支給するものではなくても、勤務に関連して供与される経済的な利益ですので、原則は、給与に加算して所得税を課すこととなります。
しかし、金銭でないため課税を行うことが難しい、従業員から見れば選択の自由がないものであること、社会通念上一般に慣習的に行われている部分もあること、そうしたことを政策的に考慮して、一定の範囲内のものであれば、強いて給与所得として源泉所得税の課税の対象としなくても良い、という取扱が行われています。
人材採用のために頑張って福利厚生を拡充したのに、その結果が、税務調査になり、経済的利益を給与課税していなかったとして指摘され、所得税を追徴され、ペナルティまで課されては、元も子もありませんし、対従業員に対しても、示しのつかない話になりかねません。 こうした、経済的利益や現物給与の取扱については、細かい数式に寄って経済的利益の額、課税しなくて良い限度額を算出するものが多く、税理士においても、それほど詳しくない先生も多いと思います。
「賃貸料相当額」とは
代表例として、社宅を提供する場合ですが、まず、「賃貸料相当額」(月額)というものを計算します。
その「賃貸料相当額」(月額)の2分の1以上を本人から徴収している場合には、給与として課税しなければならない経済的利益は、ないこととされています。
賃貸料相当額(月額)=その年度の家屋の固定資産税の課税標準額✕0.2%+12円✕家屋床面積÷3.3㎡+その年度の敷地の固定資産税の課税標準額✕0.22%
この算式を見て、簡単に計算できるという人は、税務や経理の上級者だと思いますが、実際はなかなか経験しないと理解できないところです。
他の経済的利益に関しても、このような数値計算と課税しなくて良い限度額などから取扱いが定められております。
源泉所得税についての税務調査は、主に資本金1億円以上の企業を対象に、税務署の部門、特別国税調査官、国際税務専門官、というポストの担当者により、3年程度で循環的に行われますが、ベテランの担当者も多く、深く細く検討しますので、日頃から、正しい取扱をしっかり確認して、税務署に指摘されないよう適正に取扱う必要があります。
まとめ
当事務所では、源泉所得税に関する顧問契約をお引き受けしており、月次で訪問して、様々な個別の取扱の質問や相談を受け、また、実際の税務調査の際には、税務調査の立会を行い、会社の言い分を理論的に整理して、税務署調査官に伝えるなど、企業の側の代理人として、対応させていただいております。
何か質問や相談事があれば、是非、当事務所の経験や知識をご活用下さいませ。
お気軽にご相談ください。
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