節税しながら将来への備えを、賢く利用する中小企業向け共済制度
税務・財務


この記事の目次
節税策として取り上げられることの多い中小企業向け共済制度について、制度の内容と節税の要点を解説します。

中小企業向けの共済制度には以下のようなものがあります。
 
■ 小規模企業共済:中小企業基盤整備機構
  加入者数 約128万人(平成28年3月末現在)
 
■ 経営セーフティ共済:中小企業基盤整備機構
  加入企業数 約40万社(平成28年3月末現在)
  ※正式名称は「中小企業倒産防止共済」と言います
 
■ 中小企業退職金共済:勤労者退職金共済機構
  加入企業数 約36万社 335万人の従業員が加入(平成29年3月末現在)

 
  これらの制度は中小企業基本法に基づき中小企業の支援を目的として中小企業や個人事業主の福祉の増進と経営基盤の強化のためにつくられたものです。
 
  そのため対象とする企業は中小企業基本法の定義する中小企業者、小規模企業者ということになります。 以下、「中小企業者」、「小規模企業者」は下表の定義に該当する中小企業、小規模企業を指します。
  中小企業基本法の定義
出典 :2015年度版中小企業白書より

小規模企業共済は昭和40年、経営セーフティ共済は昭和53年、中小企業退職金共済制度は昭和34年の発足で長く運用されている国の制度です。
 
平成26年経済センサスによる中小企業者と小規模企業者の数はそれぞれ、380万者と325万者なので、経営セーフティ共済と中小企業退職金共済は中小企業者の約1割前後、小規模企業共済は小規模企業者の4割近くが加入している実績のある共済制度となっています。
 

中小企業向け共済制度の概要


■ 小規模企業共済
個人事業主や小規模企業の役員が、事業を廃止した時や死亡した時、または、加入者が65歳以上かつ15年以上掛金を納付した場合に老齢給付として積み立てた共済金を受け取れるという制度です。
共済金とは別に一定の要件のもと掛金の範囲で事業資金の貸付が受けられます。


■ 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
取引先の倒産などによる中小企業の連鎖倒産を防ぐために、売掛金債権が回収困難になった中小企業に対し掛金を原資とする無利子・無担保の貸付を行うものです。 小規模企業共済と同様に事業資金の貸付があります。


■ 中小企業退職金共済
経営基盤が弱く単独で退職金制度を持つことが難しい中小企業、小規模企業に対し、退職金制度の導入を支援するための制度です。
事業主が従業員ごとに毎月の掛金を納め、従業員が退職した時に中退共(勤労者退職金共済機構)から退職金がその従業員に対して直接支払われます。


各共済制度の加入資格


■ 小規模企業共済の加入資格
中小企業基本法による小規模企業者に該当する個人事業主や会社の役員が対象となります。個人事業主の共同経営者も個人事業主1人につき2人まで加入できます。 これに加え、以下の小規模企業者が含まれます。

・20人以下の企業組合、協業組合の役員
・従業員数20人以下の農事組合法人
・従業員数5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員


■ 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の加入資格
中小企業基本法による中小企業者が対象です。
「引き続き1年以上事業を行っていること」という条件がつきます。

中小企業に加えて、企業組合、協業組合、事業協同組合、商工組合なども加入できます。 以下のような場合等については加入の対象外となります。

・金融業、不動産業など一般消費者を取引相手とする事業者
・所得税、法人税の滞納がある場合
・事業の経理内容が不明な場合


■ 中小企業退職金共済の加入資格
中小企業基本法による中小企業者が対象です。
事業主が中退共と共済契約を結んで共済者となり、加入させる従業員が被共済者となります。
原則として雇用するすべての従業員を加入させることが条件となります。
以下の従業員については加入の義務はありません。

・期間雇用、季節雇用の従業員
・試用期間中の従業員
・短時間労働者
・休職期間中の従業員
・定年間近で雇用関係の終了が明らかな従業員

小規模企業共済の加入者は中小企業退職金共済に加入することはできません。


各共済制度の掛金


■ 小規模企業共済の掛金
月額1,000円~7万円のあいだで500円きざみで任意に設定できます。
将来の掛金をまとめて納付することができる前納と期限の過ぎた掛金を納付する後納ができます。 年払い、半年払いとして定期的な前納と任意の月数の掛金を前納ができます。 途中で掛金の増額・減額が可能です。

所得がない時や災害、疾病により掛金を納付できない時は6ヶ月または12ヶ月の間、掛金の納付を停止することができます。

■ 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金
月額5,000円~20万円までの範囲で5,000円きざみで任意に設定できます。
掛金の積立は掛金総額が800万円に達するまで行うことができ、掛金総額が800万円に達すると掛金の口座振替が停止されます。

実際に取引先の倒産で共済金の貸付を受けた場合、その後6ヶ月間は共済金償還の据置期間として、掛金の口座振替が休止されます。 小規模企業共済と同様に掛金の前納・後納ができます。

前納は800万円が限度額となっており、前納した場合、掛金月額の0.5%×前納月数分の前納減額金が戻ってきます。 後納の場合は後納割増金(最大年14.6%)が後納分の掛金に加算されます。途中で掛金の増額・減額が可能です。

■ 中小企業退職金共済の掛金
掛金月額は従業員ごとに以下の16種類から事業主が選択できます。掛金月額によりその従業員に支払われる退職金の総額が変わります。

掛金月額の種類
出典 :独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部HP


前出の2つの共済制度と同様に12ヶ月を限度に掛金を前納することができます。 この制度へ新たに加入した場合と掛金月額を増額した場合に、事業者の掛金月額に対し一部国が助成しています。

・新規加入後4ヶ月目から12ヶ月間、掛金月額の1/2(上限5,000円)を国が助成。
・18,000円以下の掛金月額を増額する場合に、増額した分の1/3を国が助成。


節税のポイント
節税策として取り上げられることが多いこの3つの制度ですが、いずれも掛金が損金(法人の場合)、必要経費(個人事業主の場合、小規模企業共済では所得控除)として認められていることが節税のポイントです。
小規模企業共済の具体的な節税額の例を見ると以下のようになります。

掛け金の全額所得控除による節税額一覧
出典 :中小企業基盤整備機構:小規模企業共済 e-中小企業ネットマガジン 【第3回】 実感してください、「小規模企業共済」の節税効果


加えて、3つの制度ともに掛金の前納が可能なところが、機動的な節税策として活用しがいのある仕組みとなっています。
小規模企業共済の場合は、年内に当年分の掛金を支払、さらに翌年分の掛金を前納すれば、最高で、7万円(掛金限度額)☓ 24ヶ月分=168万円の所得控除が可能となります。

以下は、経営セーフティ共済の前納制度を用いた節税効果の例になります。
3月決算の会社が当期の利益の状況を見て、大幅に利益が出そうであれば次年度分の掛金をまとめて前納し、損金を増やすことで大きな節税効果が見込めます。

節税の仕組み図
出典 :中小企業基盤整備機構:経営セーフティ共済 e-中小企業ネットマガジン 【第2回】「経営セーフティ共済」を賢く活用


中小企業退職金共済も他の2つの共済制度と同様に損金または必要経費となります。また従業員の給与所得にもなりません。



各共済制度の共済金


■ 小規模企業共済の共済金
加入者が一線を退いた時のための資金積立という趣旨の制度なので、以下の時期が来た時に共済金を受け取ることになります。

・加入者が事業を廃止した時、加入者が死亡した時。これを「A共済事由」と言います。
・加入者が65歳以上で掛金の納付が15年以上ある場合。これを「B共済事由」と言います。

共済金の金額は、例えば掛金を月額1万円とした場合以下のようになります。

共済事由および基本共産金の額
共済金の受取は一括受取と分割受取を選択できます。

中小企業基盤整備機構のホームページで、現在加入して、将来共済金を受け取りたい年月を入力すると、その時点で受け取れる共済金の金額と節税額を試算できる「「加入シミュレーション」のページが設けられています。

■ 経営セーフティ共済の共済金(中小企業倒産防止共済)
取引先が倒産し、売掛金債権等(売掛金債権と前渡金返還請求権)の回収が困難になった時、共済金の貸付を受けることができます。貸付ですので民間の取引信用保険の補償とは異なります。

貸付額は、回収できなくなった売掛金債権の額と掛金総額※の10倍に相当する額のいずれか小さほうの額となり、上限が8,000万円です。
無利子・無担保で償還期間は金額により5~7年、54~78回均等分割償還になります。
加入後6ヶ月が経過していることと、掛金月額の6ヶ月分以上の納付があることという条件がつき、貸付手続きを行える期間は倒産と認められた日から6ヶ月以内となっています。

本制度が定義する取引先の倒産は「法的整理」、「金融機関による取引停止処分」、「私的整理」、「災害による不渡り」、「特定非常災害による支払不能」と定められており、「夜逃げ」は倒産に該当しません。

また、売掛金債権には、一般消費者を対象とする債権、貸付金債権、融通手形に基づく債権、不動産賃貸に基づく債権は除外され、受取手形に裏書人がある場合はすべての裏書人が倒産していなければ被害額から除外されます。

※掛金総額は共済金の貸付時までに納付した掛金の合計額から10%が差し引かれます。

■ 中小企業退職金共済の共済金
共済金は従業員に支払われる退職金ということになります。

支払われる退職金の額は掛金月額と納付月数によって定められている基本退職金額と運用利回りによる付加退職金の合計になります。

しかし、付加退職金は納付月数43ヶ月目以降の基本退職金に毎年設定される支給率を乗じた額になりますが、平成28年と平成29年の支給率は0%となっています。

基本退職金額表
(独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部HPより)

これを見ると、納付期間が36ヶ月で掛金総額と基本退職金額が同額になります。 したがって、被共済者の従業員が3年未満で辞めてしまった場合、もとが取れないということになります。


節税のポイント
小規模企業共済で受け取る共済金は、一括受取の場合は「退職所得扱い」、分割受取の場合は「公的年金の雑所得扱い」となります。共済事由が発生し受け取った共済金にも所得税が課税されますが、一括受取の場合に退職所得控除、分割受取の場合は公的年金控除により税負担軽減につながります。

退職所得控除は掛金納付期間が長いほど控除額が大きくなるため、少額の掛金からでも早期に積立を行うほうが有利になります。
以下は中小機構のホームページで紹介されている退職所得控除の計算例です。

プラン例
出典 :中小企業基盤整備機構:小規模企業共済 e-中小企業ネットマガジン 【第6回】早く加入し、積み立てたほうが断然お得!小規模企業共済の掛金納付制度



各共済制度の事業資金貸付


■ 小規模企業共済の事業資金貸付
「一般貸付」として掛金を12ヶ月以上納付すると、それまで積み立てた掛金総額の範囲で事業資金の貸付を受けることができます。貸付限度額は掛金納付月数により掛金総額の7~9割で、算出される貸付限度額が10万円を超えていることが条件となります。 貸付額の上限は2,000万円、利率は1.5%です。

貸付期間は100万円以下→12ヶ月、300万円以下→24ヶ月、500万円以下→36ヶ月、505万円以上→60ヶ月となっています。

さらに、「疾病災害貸付」、「事業承継貸付」、「緊急経営安定貸付」など6種類の一定の要件について商工会議所から確認を受けると、上限1,000万円、利率0.9%、500万円以下→36ヶ月、505万円以上→60ヶ月、6ヶ月ごとの元金均等割賦償還と有利な条件で貸付を受けることができます。

■ 経営セーフティ共済の事業資金貸付
取引先の倒産等が発生した場合以外でも事業資金の貸付を受けることができます。
12ヶ月以上掛金を納めていることが条件となります。
掛金総額に対して掛金の納付月数により7~9割が貸付限度額となります。
貸付期間1年の期限一括償還で利率は0.9%、倒産等があった場合と同様に無担保・無保証人の貸付となります。

■ 中小企業退職金共済の事業資金貸付
事業資金貸付等の制度はありません。


まとめ


中小企業の経営者にとって、自分の将来と経営リスクへの備えを行いながら所得を減らして節税になるこれらの制度の活用は検討したいところです。中小企業向けに作られた支援制度でありキャッシュフローの少ない中小企業、小規模企業にとっては取り組みやすいものとなっています。

しかし、制度として対象や要件が細かく定められていることから、同様な機能を果たす民間の法人保険なども視野に入れながら、それらの備えとして求める目的に合ったものであるかどうかと、節税策としてどの程度の効果をもたらすかのバランスをよく考えることが必要です。

将来に備えるプランを確かなものにするため専門家の知識を是非活用してください。

ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
参照 : SHARES HP

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